第2次世界大戦の敗北で東西に分断されたドイツが統一されてから3日で30年となった。同日、東部ポツダムで記念式典が行われ、シュタインマイヤー大統領やメルケル首相ら約200人が参加した。[br] この間、ドイツは経済大国として、さらには政治大国としても発展し、欧州民主主義の「模範国」として世界的な存在感を強めた。ドイツ統一を果たしたコール、国籍法の改正や移民法の制定で移民政策を前進させたシュレーダー、そしてメルケルの3首相は欧州でも屈指の安定した政治体制を築き上げた。[br] メルケル氏は2005年の就任から4期15年間、ギリシャ債務危機や統一通貨ユーロ危機のほか、シリア難民が大規模に流入した欧州難民危機などで指導力を発揮。フランスとともに枢軸として欧州統合の拡大・深化を引っ張ってきた。[br] 「ドイツ国民の多数にとって、またほとんどの近隣諸国との関係において、この30年は長い複雑なドイツの歴史の中で最良のものだったと言いたい」(英紙)と評価する見方もある。ナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺の反省の上に立って、人権擁護、法の支配など西洋の価値観を実践してきた伝統を引き継ぎ、欧州統合をさらにけん引することを期待したい。[br] しかし国内では統合した後も旧東ドイツの経済復興が進まず、東西格差が残る。旧東ドイツの平均月収(昨年)は約2850ユーロ(約35万円)と西側の85%だ。最近の世論調査では約9割が統一は成功だったと答えた一方で、旧東ドイツでは57%が自らを「二級市民」と思うと回答した。[br] 政府への不満を背景に、旧東ドイツではイスラム教徒移民への差別や外国人嫌悪・排斥などの行動が根強く、懸念される。格差の解消にはさらに年月がかかるだろうが、最優先の課題として取り組まなければいけない。[br] メルケル首相が約100万人のシリア難民らを受け入れたことへの反発などから、旧東ドイツを中心に、ポピュリスト(大衆迎合政党)や極右勢力が地方選挙で躍進し、戦後初めて連邦議会にも進出するなど、安定を誇ったドイツの政治も変化し始めた。[br] 首相は2021年までの任期を務めた後、政界を引退すると表明した。後任の指導者は統一後30年の順調な進展とは逆に、厳しい政治情勢に直面する。メルケル氏が好んだ言葉、「EUが繁栄するときにだけドイツは繁栄する」を踏まえて、新たな歴史を切り開いてほしい。