時評(9月29日)

国連創設75周年という節目の国連総会は新型コロナウイルス禍の下、一般討論がビデオ演説となったが、米中首脳の対立が鮮明となり、目指すべき国際協調や結束から懸け離れた姿を露呈した。 国連や国際機関が弱体化したのは米国第一主義を掲げるトランプ米大.....
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 国連創設75周年という節目の国連総会は新型コロナウイルス禍の下、一般討論がビデオ演説となったが、米中首脳の対立が鮮明となり、目指すべき国際協調や結束から懸け離れた姿を露呈した。[br][br] 国連や国際機関が弱体化したのは米国第一主義を掲げるトランプ米大統領の存在によるところが大きく、極めて残念だ。[br][br] こうした中、菅義偉新首相が各国に連携を呼び掛け、ウイルスの感染を克服するため国際社会に貢献する考えを示したのは心強い。首相には国連強化と国際協調に向け尽力してほしい。[br][br] コロナ危機の収束には、ウイルスの研究を進め、治療薬やワクチンを速やかに開発、世界中に供給することが必要であり、情報共有など各国が一丸となって対処することが不可欠だ。国連創設時の「協調と連携」の精神を尊重することが今ほど求められている時はないだろう。[br][br] だが、現実の国際関係は対立と分断を色濃く反映する厳しい状況だ。特に米中の二大国は「新冷戦」と称されるほど角を突き合わせている。両国は貿易、経済分野だけではなく、香港問題、台湾関係、南シナ海の安保情勢まで広く対立を深めており、世界の懸念の的だ。[br][br] 今回の国連演説でも、トランプ氏はコロナ禍について「疫病を世界に拡散させた」と中国を名指しで非難、中国の習近平国家主席が「汚名を着せるな」と反発した。[br][br] トランプ氏が中国への攻撃姿勢を強めているのは11月3日に迫った大統領選を意識しているからだ。同氏は感染拡大防止の初動に失敗したと批判されており、中国をやり玉に挙げることで、自らの責任を回避しようと図っているように見える。[br][br] 最近発売された著名なジャーナリストによる著書は、トランプ氏がウイルスの「致死性」を知りながら、楽観論を繰り返したことを暴露した。同氏は国民のパニックを避けたかったと弁明したが、大統領選の対立候補であるバイデン前副大統領は「国民にうそをついたのはほとんど犯罪」と断じている。[br][br] 国連総会の前、コロナ禍を機に世界の紛争地の停戦を呼び掛けた安全保障理事会の決議は、米国と中ロの対立でなかなか採択できず、国連の機能低下があらためて浮き彫りになった。こんな事態が繰り返されては国連の存在が問われよう。[br][br] 菅首相は演説で、途上国へのワクチン供給を支援する考えを示した。コロナ禍は国連が連携を取り戻す機会でもある。首相のイニシアチブに期待したい。