時評(9月25日)

菅義偉首相がトランプ米大統領のほか、韓国やオーストラリア、英国など各国首脳と相次いで電話で会談し、外交活動を始動した。 全世界が新型コロナウイルスという脅威と闘うために国際的な連帯が必要不可欠であるにもかかわらず、米中両大国の対立は激しさを.....
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 菅義偉首相がトランプ米大統領のほか、韓国やオーストラリア、英国など各国首脳と相次いで電話で会談し、外交活動を始動した。[br] 全世界が新型コロナウイルスという脅威と闘うために国際的な連帯が必要不可欠であるにもかかわらず、米中両大国の対立は激しさを増すばかりだ。米国の同盟国で、中国とは隣国同士で経済的な相互依存関係で結ばれる日本には、米中両国を対立から協調へと導くための創造的で主体的な外交が求められる。[br] 安倍晋三前首相はトランプ大統領ら各国首脳との間で築いた個人的な関係をてこに「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を展開した。これを補佐役として7年8カ月にわたって見守ってきた菅首相は安倍外交を継承していく方針を示している。[br] まれに見る長期政権になったことで、国際舞台での存在感を発揮した前首相だが、外交上の多くの懸案は残ったままだ。[br] 安倍氏はロシアのプーチン大統領とは頻繁に会談したが、肝心の北方領土問題はいっこうに動かない。安倍、菅両氏が長年取り組んできた北朝鮮による日本人拉致問題も前進する気配はない。さらに日韓関係は戦後最悪と言われる状態にまで悪化しており、菅政権下で関係改善の手掛かりをつかみたいところ。[br] 日米同盟を基軸に近隣諸国とも安定的な関係の構築を目指すという菅政権には、米国が自国最優先一辺倒ではなく国際協調をより重視するよう働き掛ける外交が求められる。一方、中国に対しては、米国に同調して批判するだけでなく、香港や新疆ウイグル自治区での強権政治と、周辺国との摩擦を引き起こす強引な海洋進出などを控えるよう近隣の友好国として求めていくべきだろう。[br] 菅首相は近く習近平中国国家主席と電話会談を行う。延期された習主席の国賓としての来日をいつに設定するのか。自民党内に来日反対論がある中で決断を迫られる。[br] 菅政権は安全保障分野でも懸案処理に迫られる。新たな弾道ミサイル防衛策として「敵基地攻撃能力」の保有に踏み切るのか。専守防衛の変質を意味するだけに自民党内、与党内だけでなく国会での与野党による濃密な議論が必要だ。[br] 26日には国連総会で菅首相のビデオ演説が流れる。国際会議へのデビューとなる。米国との同盟と近隣諸国との友好関係を堅持しながら、何よりも国際協調に努めることが日本外交の真骨頂であることを国際社会にアピールしてもらいたい。