時評(9月17日)

自民党の菅義偉総裁が第99代の首相に選ばれた。歴代最長政権となった安倍晋三前内閣の後を受けた7年8カ月ぶりの首相交代だ。 菅氏は派閥に所属せず世襲議員でもない。総裁ポストを巡って激しい派閥抗争を重ねてきた自民党の歴史で、名実ともに無派閥の首.....
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 自民党の菅義偉総裁が第99代の首相に選ばれた。歴代最長政権となった安倍晋三前内閣の後を受けた7年8カ月ぶりの首相交代だ。[br] 菅氏は派閥に所属せず世襲議員でもない。総裁ポストを巡って激しい派閥抗争を重ねてきた自民党の歴史で、名実ともに無派閥の首相の誕生は初めてだ。[br] だが、菅氏の「脱派閥」の持論とは裏腹に、閣僚や党役員の顔触れは新鮮味に乏しく、派閥のバランスに配慮した安定重視の人事に終わった。衆院当選同期組を厚遇し、安倍氏の実弟の岸信夫防衛相を初入閣させるなど「論功行賞」「縁故採用」の面も否めない。[br] これでは新政権への国民の期待は高まらないだろう。新型コロナウイルス対策と経済再生を両立させ、国民生活に安心を取り戻す具体的な結果を早急に出すことが求められる。[br] 折から、衆参150人の野党第1党となる新しい立憲民主党が結成された。枝野幸男代表は、菅首相が目指す社会像「自助、共助、公助」を批判し「行き過ぎた自助を求める新自由主義か、支え合いの社会か、選択肢を示すときだ」と対決姿勢を鮮明にした。[br] 与野党の新体制が整ったのを機に、国会で菅、枝野両党首らが、こうした論点を巡って本格論戦を行い、政見を競い合うよう求めたい。早急に臨時国会を再召集し、首相の所信表明演説と各党代表質問、衆参両院の予算委員会を開催すべきだ。慣例にとらわれず、党首討論の優先開催を検討してもいい。[br] 政権人事では、内閣と党運営の要の麻生太郎副総理兼財務相と二階俊博幹事長を再任。計8閣僚が再任され、加藤勝信官房長官ら3人が横滑り、4人が再登板と経験重視の人選を行い、全7派閥から入閣させた。女性閣僚が2人にとどまったのは時代に逆行する。[br] 手腕が未知数の外交では、茂木敏充外相の続投で安倍外交を受け継ぐ姿勢を示した。米中対立が激化し、日本を取り巻く安全保障環境が厳しくなる中、したたかな外交の展開が緊要だ。[br] 政治不信の解消の責任も、新内閣は引き継ぐべきだ。森友・加計学園、桜を見る会疑惑に関連し、菅氏は総裁選で問題は解決済みとの基本姿勢に終始した。責任回避を続ければ、政治への信頼回復はおぼつかない。[br] 自民党内では衆院の早期解散論が高まっている。連立政権継続で合意した公明党は否定的だ。まずは国会論戦を通じて所信を国民に訴えることが、菅首相の最優先の責務である。