青森銀行とみちのく銀行の経営統合案が取り沙汰され、青森県内に波紋を広げている。両行とも協議入りを否定したものの、経営統合自体は「選択肢の一つ」として可能性を排除していない。規模が似通った同一県内のライバル同士による“金融再編”は実現するのか。実現した場合、地域経済にどのような影響をもたらすのか。県内の有識者2人に話を聞いた。[br][br] ◇ ◇ ◇[br][br] 地域金融機関を取り巻く環境は非常に厳しい。人口減少による資金需要の減少や、日本銀行の低金利政策による利ざやの縮小など、容易に解決できない構造的問題が横たわっている。新型コロナウイルスも追い打ちを掛け、将来的に地銀の再編は全国的に避けられないだろう。[br] 両行については、県外の銀行と連携を進めていた経緯があり、経営統合するなら他県との組み合わせを想定していた。ただ、昨年10月から両行が包括的連携の検討を進めているので、経営統合は、その流れの中で浮上した案だと感じた。[br] 今年11月に施行される独禁法の特例法も後押しとなっている。両行が統合した場合、県内の貸出金シェアが7割以上になるため、これまでは想定すらできなかったが、今後は統合が有力な選択肢となる。ただ、特例法第1号となると、制度運用に不透明感があり、影響を注視しなければならない。[br] 県外か県内か。どちらの選択をするにせよ、県経済にどれだけ貢献できるのか、顧客にどのようなメリットを還元できるかが判断材料になる。[br] 統合した場合の効果としては、店舗や人員の効率化、システムの共通化などによるコスト削減で、経営基盤の強化が図られ、地域に必要なサービスの提供が維持される。ただ、質の向上につながるかは未知数だ。[br] 寡占状態となることで、顧客の選択肢が減るなどのマイナス面もある。貸出金利が不当に引き上げられるなどの大きな不利益は制度上発生しないだろうが、競争関係が無くなることの影響を見極める必要がある。[br] また、これまでライバル関係にあった組織が一つになることは、行員にも大きな負担だ。組織体制や企業風土、給与体系などすり合わせが必要なことが膨大で、大きなハードルになるのは間違いない。[br] 地方銀行は、伝統的な預金貸出業務に加え、これまで培ってきた人脈を生かし、中小企業の成長を支え、地域創生に貢献していくことが求められる。顔と顔をつきあわせ、顧客に寄り添ったサービスが提供できる道を模索してほしい。 [br][br]【略歴】 くにかた・あきら 大阪大大学院卒。経済学博士。専門分野は金融に関する実証分析。神奈川県出身。46歳。