全国的に地方銀行の統合を進めたい金融庁にとって、大きなハードルとして横たわっていたのが独占禁止法だった。地域で高いシェアを占める金融機関が生まれれば、利用者の利便性を損ねかねない。長崎県内の地銀合併では公正取引委員会の審査が難航し、両行が貸出債権を他行に譲渡してシェアを下げるという異例の経緯をたどった。[br] ただ、長引く日銀の金融緩和によって、貸出金利で稼ぐ地銀のビジネスは限界が近づいている。政府の危機感は強く、今年5月には地銀同士の統合に独占禁止法を適用しない特例法を成立させた。独占的な立場の地域金融機関が生まれるのを容認した意味を持つ。[br] 全国的に見ても、青森銀行とみちのく銀行は規模が接近している地銀だ。長崎で苦い経験をした末にようやく独占禁止法の壁に穴を開けた金融庁にとって、適用第1号の案件として格好のターゲットに映っているのは間違いない。[br] 統合によって地域経済を支える力が強まるのを期待する向きもあろう。だが、青森県内で競争の原理が弱まるのも確かだ。これまで両行が競って地域振興に尽くしてきたのに、その推進力が弱まりはしまいか。利用者の選択肢が閉ざされないだろうか。サービスが低下しないだろうか。[br] 金融機関の収益にばかり目を向け、利用者を置き去りにしたままで金融庁が主導する統合があってはならない。長く地域経済を支えてきた2行体制の功罪を検証し、地域経済の担い手である事業者の声を踏まえたかじ取りを求めたい。