時評(9月4日)

11月の米大統領選挙まで2カ月を切った。 再選を目指す共和党のトランプ大統領は未曽有のコロナ禍の中、対立候補の民主党のバイデン前副大統領に後れを取ってきたが、ここにきて現職の立場を利用して巻き返し、勝敗の行方は予断を許さない情勢だ。 トラン.....
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 11月の米大統領選挙まで2カ月を切った。 再選を目指す共和党のトランプ大統領は未曽有のコロナ禍の中、対立候補の民主党のバイデン前副大統領に後れを取ってきたが、ここにきて現職の立場を利用して巻き返し、勝敗の行方は予断を許さない情勢だ。[br] トランプ氏は人格攻撃を激化させており、このままでは選挙戦が中傷合戦に陥る懸念も強い。両者には最後まで建設的な論議を尽くすよう求めたい。[br] 各種世論調査では、バイデン氏は年初来、支持率で終始上回ってきた。一時は10ポイント以上の差がついていたが、先月末の共和党大会後、トランプ氏の支持率が上昇。バイデン氏の優位はなお変わらないものの、一部の調査では接戦状態になっている。[br] トランプ氏が劣勢だったのはコロナ禍の拡大が要因だ。初動対応の失敗で、感染者が600万人を超え、世界最多を更新していることを国民は十分認識している。当初、トランプ氏は、好調の経済を背景に一気に再選を図る戦略だった。ところが経済は活動自粛で歴史的に落ち込み、戦略の見直しを迫られた。[br] そこで陣営が打ち出したのが、白人警官の黒人暴行事件を巡る「抗議行動の混乱と治安悪化」を選挙戦の争点に据える新戦略だ。抗議デモの参加者に「極左の暴徒」、バイデン氏に「左派の操り人形」というレッテルを貼った。同氏が副大統領候補にリベラルなハリス上院議員を選んだこともこの主張を激化させた。[br] トランプ氏の思惑は明白だ。コロナ批判から国民の目をそらす一方、デモによる社会不安を強調。沈静化できるのは「犯罪に弱腰」のバイデン氏ではなく、強硬方針の自分であることを印象付けようとしている。[br] 抗議行動は都市部が主要な舞台になっているが、トランプ氏は治安悪化を恐れる郊外の白人主婦層の支持拡大に狙いを定めており、1日に中西部ウィスコンシン州の暴動現場を訪問したのも「法と秩序」を重視する姿勢を示すためだ。[br] 「対立と分断」をあおる政治手法に対し、バイデン氏も従来の穏健な態度を一変させ、トランプ氏を「有害な存在」と激しく非難。「毒素」とも呼んで排除しなければならないと対決姿勢をあらわにした。[br] バイデン氏はトランプ氏が嫌がるコロナ対応の失敗を引き続き批判していく作戦だが、非難の応酬が激化する恐れが強い。両者にはあくまでも、将来像を示し、政策で勝負するよう要求したい。