時評(9月1日)

安倍晋三首相は辞任表明に先立ち、秋以降に懸念される新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時流行に備えた対策パッケージを決定した。 首相の「置き土産」と言えるが、現下の対策にも遅滞や空白は許されない。現在の政府が十分に機能できるよう、自.....
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 安倍晋三首相は辞任表明に先立ち、秋以降に懸念される新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時流行に備えた対策パッケージを決定した。[br] 首相の「置き土産」と言えるが、現下の対策にも遅滞や空白は許されない。現在の政府が十分に機能できるよう、自民党総裁選とコロナ対策を両立させるための工夫が求められる。[br] また、9月後半に予定される新首相を選ぶための臨時国会は、会期幅を十分に確保しコロナ対策を中心とした議論を深めるべきだろう。[br] 首相は8月28日、新型コロナ感染症対策本部会合で、対策パッケージを決めた後の記者会見で辞任を表明した。公表されたパッケージは無症状者や軽症者にも入院を勧告している感染症法の運用を見直し、自宅やホテルでの療養を基本とするための政令変更が柱。無症状者らの入院による医療機関の業務圧迫を避けるのが狙いだ。[br] このほか、簡易キットを使った検査を1日20万件実施できる体制の整備、ワクチンは2021年前半までに国民全員に提供できる量の確保を目指すことなども掲げている。[br] 全国知事会は「知事会の提言を踏まえた内容で、感染拡大の『次なる波』に備えていく政府の決意が示された」と評価。一方、感染症法の運用見直しで医療費負担、積極的疫学調査などの適用がなくなれば、コロナ封じ込めに支障が生じる恐れがあるとの懸念も示した。[br] 対策の実行に当たっては、地域によって異なる医療機関や保健所の体制なども考慮しながら柔軟に対応していくことが求められる。感染状況に即応する不断の見直しや修正も欠かせない。国と自治体の対話はますます重要になる。[br] 感染症の経済的影響も気がかりだ。内閣府が先ごろ発表した4~6月期の国内総生産(GDP、季節調整値)の速報値は、物価変動を除く実質で年率換算27・8%のマイナスだった。リーマン・ショック後より、さらに悪い数字だ。首相がコロナ後に目指すとしていたV字回復はとうてい望めず、年内に景気が「二番底」に転落する恐れがあると指摘されている。[br] 首相は、企業が支払った休業手当の一部を国が補う「雇用調整助成金」の日額上限を引き上げた特例措置の期限を9月末から12月末に延長すると表明したが、加藤勝信厚生労働相は年明け以降の特例継続に否定的な考えを示している。新たな対策も視野に入れながら景気動向を注視していく必要があるだろう。