【連載・コロナと共に~変わる価値観~】(1)「地方」

コロナ禍での地方の在り方について語る山下祐介教授=7月下旬、東京都(リモート取材)
コロナ禍での地方の在り方について語る山下祐介教授=7月下旬、東京都(リモート取材)
加速度的に人や情報などの東京一極集中が進む中、新型コロナの感染拡大は、人口減少に直面する地方に目が向くきっかけにもなった。地方移住やゆったりと暮らすスローライフにも注目が集まっており、地方にとっては人口増加の転機との見方もある。コロナ禍の中.....
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 加速度的に人や情報などの東京一極集中が進む中、新型コロナの感染拡大は、人口減少に直面する地方に目が向くきっかけにもなった。地方移住やゆったりと暮らすスローライフにも注目が集まっており、地方にとっては人口増加の転機との見方もある。コロナ禍の中、地方はどのような一手を打っていくべきか。東京都立大の山下祐介教授(51)=都市社会学=に聞いた。[br] ―新型コロナは「地方」の在り方を変えるのか。[br] 基本的に大災害などが起きると、国家への権力集中が進み、その権力が狙う変化が加速する傾向にある。東日本大震災では、それまで進んでいた東京一極集中がさらに加速した。[br] 一方、今回のようなパンデミック(世界的大流行)は、社会は本来どうあるべきかを映し出すきっかけにもなる。リスク管理の面では、各都道府県知事が国とは違う対策などを発言し、県や地域、地方自治がいかに重要であるかを示した。国や中央が全て正解ではないことも実感しただろう。[br] 地方での変化はこれから起きる。ただ、地域や地方をどのように変えていくかは、われわれが自分で考えていくことが大前提になる。[br] 放っておけば、中央の都合のいいように、これまで進んでいた権力集中や、東京一極集中は、ますます加速する。地方として積極的に仕掛け、したたかに困難を乗り超えていかなければならない。[br][br] ―地方移住への関心が高まっている。[br] 過剰過密となっている首都圏は今回、特に大きな打撃を受け、人々の価値観には変化が生じている。地方移住が進むかどうかは、それをいかにポジティブなものにできるかにかかっているだろう。[br] さまざまな考えの転換がある中、例えば子どもの教育では首都圏の過密な場所がいいのか、地方の環境がいいのかが浮かんでくる。地方は防衛施設や原子力の問題などがあるが、食料生産、燃料確保、製造業といった強みがある。[br] 実際の移住施策に関しては、Uターン重視で取り組むべきだろう。特に青森県は、首都圏に輩出した人の数が多く、いつかは帰りたいと思っている人がいるはず。今回の東京を中心とする感染拡大は、今の暮らしを変えたいと思っている人が地元に戻る選択をするきっかけにもなるはずだ。そうした人とのつながりを大事にしながら、積極的に移住施策に取り組んでいくべきだ。人口減少問題の解決にもつながっていく。[br][br] ―今後、地方への移住促進や活性化のために重視すべきことは。[br] 今回、リモートワークが広がるなどIT化が進んだ。このITをどう使うかも問われている。工夫を凝らし、活用策を徹底的に考えなければならない。[br] ITは、距離を超えた人同士の交流が実現可能であることを示した。観光コンテンツを磨いて紹介したり、オンラインでのセミナーを開いたりするなどITを活用した情報発信で地方に一層目を向けさせ、良さや価値をアピールすることが大切になるだろう。[br][br]************************[br] 世界中で猛威を振るい続ける新型コロナウイルス。日本国内でも感染が拡大し、日常生活は短期間で劇的に変化した。従来の常識は当たり前ではなくなり、人々の価値観も変わり始めている。[br] 一方、新型コロナは社会が長く抱えてきた根本的な問題や潜在するリスクなどをあぶり出すきっかけにもなった。収束の見通しが立たない中、“ウィズ・コロナ”を意識しながらどう対応していくべきか。各分野の有識者に聞く。コロナ禍での地方の在り方について語る山下祐介教授=7月下旬、東京都(リモート取材)