青森県産業技術センター林業研究所(平内町)が開発したアラゲキクラゲの新品種「青森きくらげ」の県内販売が7月から始まった。同時期に華々しく全国デビューを飾り、注目を集めた県産サクランボの独自品種「ジュノハート」の陰に隠れた感は否めないが、地道にブランド化を図り、新たな特産品の一つとして売り出してほしい。[br] キクラゲはビタミンDや食物繊維が豊富で優れた栄養価を誇るとともに、近年は低カロリーな食材として人気を集めている。国内消費の多くは海外からの輸入品で、国産品も徐々に増えているのが現状だ。[br] 同研究所は国産品に対する消費者ニーズの高まりや、夏場のキノコ生産者の収益確保に向け、2014年度から独自の品種開発に着手。県内の野山に自生する数種類のキクラゲを使用して実験を進めた結果、冷涼な県内の気候でも成長するキクラゲが見つかり、開発に弾みが付いた。今年6月には県産を強調する「青森」を冠した名前が決まった。[br] 青森きくらげは、従来のキクラゲよりも肉厚で歯応えある食感を楽しめるのが特徴。外国産の乾燥キクラゲが濃い黒色なのに対し、赤茶色の明るい色で、見た目も異なる。[br] 幅広い料理にも相性が良く、首都圏の著名料理店のシェフも「とても肉厚でいい。メインの具材としても活用できると思う」と太鼓判を押す。卵や豚肉と一緒に炒めた中華料理で定番の「木須肉(ムースーロー)」をはじめ、スープやつくだ煮といった多彩な食べ方やレシピを提案すれば、消費者にもアピールしやすくなるだろう。[br] 夏から秋が出荷時期で、今後は販売戦略が鍵となりそうだ。県や27事業者らで組織する青森きくらげ生産・販売振興会(大沢豊会長)は直径5センチを出荷基準の目安とすることを確認。商品は100グラム入りパックで200円前後(税抜き)と買い求めやすい価格を設定した。今年は約2トン採れる予定で、徐々に生産量を増加させる方針だ。[br] 県産食材では、「米の食味ランキング」で最高ランクの特Aに輝いた「青天の霹靂(へきれき)」に続き、サクランボの「ジュノハート」とその最上位ブランド「青森ハートビート」が市場で脚光を浴びた。21年度には新サーモン「青い森紅(くれない)サーモン」が全国デビューを控える。[br] これら産品と比べ、青森きくらげは地味な存在である。だからこそ逆手に取り、じっくりと消費者に浸透させる今後の取り組みに期待したい。