時評(7月31日)

中国が領有権を主張し軍事拠点化を進める南シナ海を巡り、中国の海洋支配を警戒する米国との間で緊張が高まっている。 中国は、新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大してから、南シナ海で強引な行動が目立つ。4月には中国公船がベトナム漁船を沈没させ、.....
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 中国が領有権を主張し軍事拠点化を進める南シナ海を巡り、中国の海洋支配を警戒する米国との間で緊張が高まっている。[br] 中国は、新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大してから、南シナ海で強引な行動が目立つ。4月には中国公船がベトナム漁船を沈没させ、ベトナムなどと領有権を争う南シナ海に一方的に行政区を新設した。[br] さらに7月末から8月初めにかけて南シナ海に面した南部広東省雷州半島沖合で実弾演習を行うという。7月上旬にも西沙(英語名パラセル)諸島付近で軍事演習を実施していた。中国が南シナ海の上空に、防空識別圏を設定する動きもある。[br] これに対し米国は南シナ海周辺海域を航行する「航行の自由」作戦を行い、中国をけん制した。[br] 中国は南シナ海のほぼ全域で領有権と管轄権を主張し、人工島に滑走路、レーダー施設を建設し軍事拠点化を進めてきた。[br] だが国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所は2016年、中国の領有権の主張を退ける判断を示した。中国は仲裁裁判所の判断を尊重し、覇権拡大の動きをやめるべきだ。[br] 中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)との間で「領有権争いを紛糾、拡大させる行動を自制する」と定めた2002年の南シナ海行動宣言にも違反しており、自制すべきだ。[br] トランプ米政権は、中国の南シナ海における領有権などの主権主張を公式に否定する異例の強硬姿勢に出ている。[br] 米国はオーストラリアとの外務・防衛閣僚協議(2プラス2)で、中国の南シナ海進出を否定する共同声明を出し、対中包囲網の構築に向けて動きだした。中国に対抗するため、日本を含む各国にも働き掛けを強める構えだ。[br] ポンペオ米国務長官は「仲裁裁判所の判断と同じ立場を取る」と表明し、この判断に合わせ、米国の見解を変更すると述べた。[br] 米国はこれまで、南シナ海の軍事拠点化を進める中国を批判しつつも、領有権については特定の立場を取らずに当事者間の話し合いでの解決を主張してきた。それを転換し、中国の主権を明確に否定する対応に出た。[br] 米国は、在米中国総領事館を閉鎖するなど中国との対立を強めている。こうした対中強硬姿勢の背景には、トランプ大統領の11月の大統領選での再選をにらんだ戦略があるとみられる。[br] 米中は、南シナ海などで対立を激化させて「新冷戦」に突入しないよう対話を重ねてほしい。