立憲民主党が国民民主党に対し、共に解党して新党を結成するとの新提案を正式に行った。自公連立政権に対抗して、合流による政権交代の新たな受け皿づくりを目指す動きとして注目したい。[br] ただ気掛かりなのは、消費税減税や原発などエネルギー政策を巡る国民との相違について、立民の福山哲郎幹事長が「入り口のところでの議論より、まずは合流を決めることだ」と述べ、懸案を先送りするかのような姿勢を示している点だ。[br] 両党の前身である旧民主党と旧民進党は、消費税や改憲、共産党との連携など、政策と路線を巡る内部対立を繰り返し、有権者の期待を裏切ってきた。その再現を防ぐためには、過去の反省を踏まえた理念と政策の擦り合わせが大事だろう。[br] 立民の新提案は、対等合併を求める国民に譲歩し、立民を存続政党とするとの従来の主張から「新設合併方式」に転換した。新党名は「立憲民主党」との案は変えないものの、略称・通称は「民主党」とし、新党名に「民主党」を推す声が多い国民に配慮した。[br] 立民の枝野幸男代表が記者会見で「一日も早い結論」を求めたのに対し、国民の玉木雄一郎代表は、新党名は民主的な手続きで決めるべきだと述べて「立憲民主党」案に難色を示した。[br] さらに玉木氏は、新型コロナウイルス禍への対応が最大の政治課題となっている現状を踏まえつつ、消費税減税と憲法論議の進め方について、合流前に認識を一致させたいとの立場を明らかにした。[br] なぜ今、新党結成なのかは、多くの有権者が抱く疑問ではないか。年内の衆院解散・総選挙が取り沙汰される中、選挙目当ての野合との印象しか与えないなら、世論の支持は得られまい。[br] 枝野氏は、国会での統一会派の政策活動を踏まえ「一つの政党として十分な程度に理念、政策を共有している」と自賛した。だが、消費税減税などでの両党間の隔たりを考えれば、この見解がすんなりと有権者に受け入れられるかは疑わしい。[br] 国民は玉木氏ら合流慎重派と推進派に分かれている上、前原誠司元外相が日本維新の会へ接近するなど野党連携を巡る複雑な動きも加わる。立民、国民両党とも拙速は避け、地方組織を含めた党内論議を尽くすべきだ。[br] 現職議員の議席を守ることを主眼とした「復縁」新党では、共感は広がらない。政権交代の選択肢となるためには、まずは新党が目指す社会像や理念と政策を固めるよう求めたい。