時評(7月14日)

熊本県など九州を中心に襲った記録的豪雨による災害は、自然の猛威をあらためて見せつけた。九州では熊本、大分、福岡県などで死者、行方不明者が多数に上る。住居が損壊し、新型コロナウイルスなど感染症の不安を抱えながら避難所で生活する住民も多い。日本.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 熊本県など九州を中心に襲った記録的豪雨による災害は、自然の猛威をあらためて見せつけた。九州では熊本、大分、福岡県などで死者、行方不明者が多数に上る。住居が損壊し、新型コロナウイルスなど感染症の不安を抱えながら避難所で生活する住民も多い。日本の上空には梅雨前線が停滞し、全国的に大雨の恐れは続いている。[br] この災害に、気象や防災業務の関係者からは「予想を超える豪雨」という声が聞こえる。確かに短時間に猛烈な大雨が襲来し、河川の氾濫や土砂崩れなどが多発して甚大な被害を起こした。だが近年、以前は異常とされたような気象現象が頻発し、深刻な災害が毎年起きている。過去の経験や常識にとらわれず、治水やリスク情報、避難などの在り方を徹底的に見直す必要がある。[br] 今回の豪雨では九州など各地で観測史上1位の降水量を記録。これまでに九州で60人以上が死亡、四国や中部地方なども含め計1万棟を超える住宅が浸水や損壊といった被害を受けた。[br] 記録的豪雨は、前線に大量の湿った暖気が流入、積乱雲が連続発生する線状降水帯が原因。最も被害が大きい熊本県では、4日午前4時50分に大雨特別警報が出され厳戒態勢に入ったが、球磨川が氾濫、土砂崩れも起きた。線状降水帯の動きは予測が難しく、急激な豪雨と増水で逃げ遅れるケースが目立った。[br] 例えば球磨川の支流に近い球磨村の特別養護老人ホームでは、4日未明から自力歩行できない高齢者らを2階に避難させたものの、間もなく建物に浸水し、多数の入所者が犠牲になったという。この施設では防災訓練を実施していたが、未明の緊急避難は困難を極めたに違いない。ただ球磨村では3日夜に避難勧告が出され、その前には避難準備や高齢者の避難開始を促す情報も出た。これらの危険を知らせる情報が生かされれば犠牲を減らせた可能性もある。[br] 情報がどのように伝わり、被災現場でどう認識されていたのか検証し、欠陥を早急に改めてもらいたい。各種の気象警報なども趣旨が国民に理解されているのか確かめ、命を守る行動に直結するよう再点検を望む。[br] 「暴れ川」と呼ばれる球磨川は支川との合流部などで氾濫した。こうした河川は全国にあり治水対策は急務。国は多額の費用や時間がかかるダムや堤防整備だけでなく、危険な土地の利用制限や調節池確保など新たな対策を示すが、具体化はこれからだ。地域の実情に応じた治水計画を迅速に進めてほしい。