時評(7月11日)

5月に米中西部ミネソタ州で起きた白人警官による黒人のジョージ・フロイドさん暴行死亡事件を機に、黒人差別に反対する抗議デモが全米各地から欧州などに拡大している。その中で植民地主義や奴隷制、奴隷貿易と関連のある人物の銅像などを撤去する動きが米各.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 5月に米中西部ミネソタ州で起きた白人警官による黒人のジョージ・フロイドさん暴行死亡事件を機に、黒人差別に反対する抗議デモが全米各地から欧州などに拡大している。その中で植民地主義や奴隷制、奴隷貿易と関連のある人物の銅像などを撤去する動きが米各地や英国など欧州で続けて起きている。[br] 「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大事だ)」を掲げたこの運動は、黒人差別を根絶するための闘いに転換点をもたらす可能性を秘めている。関係各国はこの機会を差別の負の歴史に正面から向き合う出発点としなければいけない。[br] パキスタン系移民出身で英労働党のサディク・カーン・ロンドン市長はツイッターで「われわれの富の多くが奴隷貿易から得られたというのは悲しい真実だが、公共の場でたたえる必要はない」と、奴隷貿易などに関連した人物の像の撤去を支持する立場を明らかにした。[br] 黒人差別を象徴するそれらの像にふさわしいのは、公共の場ではなく、奴隷貿易という本来、恥ずべき歴史を客観的に判断することができる博物館だと主張する人も多い。[br] 米国の有名校プリンストン大学は6月末、学長を務めたウッドロー・ウィルソン元米大統領の名前を大学の研究機関から取り消すことを決めた。徹底した人種隔離政策で黒人差別を断行したためという。米東部ボルティモアでは独立記念日の7月4日夜、デモ隊が、米大陸に到達したコロンブスの像をロープで引き倒し海に投げ込んだ。先住民の虐殺などに関わったとの見方からだ。[br] 英国ではオックスフォード大学が南アフリカのケープ植民地の首相を務めたセシル・ローズの像の撤去を決定。ベルギーでは、フィリップ国王が、独立60年を迎えたコンゴ(旧ザイール)に対して元国王レオポルド2世の過酷な支配に「極めて強い遺憾の意」を表明して国王として初めて謝罪した。[br] 注目すべきは、世界的な保険組合ロイズや英国最大のパブ運営業者のグリーン・キングが、奴隷貿易に関わった歴史を反省し、償いの意味を込めて黒人ら貧困者の利益となる投資を約束したことだ。黒人差別を巡って究極の課題である償いに触れた意義は大きい。[br] 米国では白人警官の暴行による黒人の死亡は「日常茶飯事」とも言える。今回は新型コロナウイルスの大流行が黒人や市民の怒りを爆発させた。これを機に黒人差別解消へと一歩前進させなければいけない。