天鐘(6月30日)

大井川は静岡県を流れる1級河川。江戸時代は徳川家康が隠居していた駿府城を守る西側の砦(とりで)でもあった。このため橋や渡し船はなく、東海道の旅人には最大の難所だった▼人足の肩や輦台(れんだい)に乗って向こう岸に渡る。だが雨が降れば一気に増水.....
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 大井川は静岡県を流れる1級河川。江戸時代は徳川家康が隠居していた駿府城を守る西側の砦(とりで)でもあった。このため橋や渡し船はなく、東海道の旅人には最大の難所だった▼人足の肩や輦台(れんだい)に乗って向こう岸に渡る。だが雨が降れば一気に増水する暴れ川。長雨の時季はそれもかなわず、1カ月近く足止めになった例もあるらしい。〈箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川〉▼今、その川を目の前にして「越すに越されぬ」思いはJR東海だろう。リニア新幹線・大井川部分のトンネル工事に依然、地元の静岡県が同意してくれない。7年後の開業を目指す同社が差し掛かる“最大の難所”である▼地元が懸念するのは、工事に伴う川の水の流出。大井川の流量が減れば、農業などに支障が出ると訴える。その昔、旅人を悩ませた川の流れは、いまや人々の生活に欠かせない。JRには痛い“足止め”だ▼長い間の懸案であるこの水問題、解決の糸口が見つからない。先日、同社社長と県知事が会談したが、やはり物別れに終わった。心躍る「夢の超特急」。一度は体験したいと思ってはいるが、さていつのことになるだろう▼総工費約9兆300億円の大事業。時速500キロで、東京・品川から名古屋まではわずか40分、大阪まででも67分で着く。発車してしまえばあっという間。けれども往々にしてこの手の問題、走り出すまでが長い。