【連載・はばたけジュノハート(4)・完】『育ての親』久保さんヒット祈る

ジュノハートの原木を見つめ、ヒットを祈る久保隆さん=24日、五戸町
ジュノハートの原木を見つめ、ヒットを祈る久保隆さん=24日、五戸町
サクランボの青森県独自品種「ジュノハート」は、五戸町の県産業技術センターりんご研究所県南果樹部で開発された。事業開始から全国デビューまで24年間。開発を担当した元職員の久保隆さん(58)=現・県三八地域県民局農業普及振興室総括主幹=は、旅立.....
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 サクランボの青森県独自品種「ジュノハート」は、五戸町の県産業技術センターりんご研究所県南果樹部で開発された。事業開始から全国デビューまで24年間。開発を担当した元職員の久保隆さん(58)=現・県三八地域県民局農業普及振興室総括主幹=は、旅立ちの日を間近に控えた“娘たち”を見つめ、「全国の人に愛され、郷土の誇りとなるサクランボになれば」と思いをはせる。[br] 独自品種の開発事業は、主力の佐藤錦だけに頼らない産地の形成を目指そうと、1996年にスタートした。こだわったのは食味に優れ、世界の舞台で勝負できる大玉品種。出荷量では全国の7割以上を占める山形県にはるかに及ばないため、際立った特徴を持つ“オンリーワン”を武器に一旗揚げる戦略だった。[br] 条件を変えながらさまざまな品種を掛け合わせ、選抜を重ねた結果、甘味が強く果肉の締まった紅秀峰と、大玉で酸味のあるサミットを交配した原木にたどり着いた。「耐寒性や病害虫への強さ、実の大きさなど、あらゆる面で頭一つ抜き出ていた」。2006年から試験栽培を行い、生産者と品質向上や収量増に向けて技術の研さんに励んだ。[br] 交配試験で生まれる100種類以上のうち、デビューできるのはたった1種類。久保さんによると、最終的な決め手となるのは「タイミングと運」だと言う。[br] ジュノハートの強運を示すエピソードがある。開発中の05年5月、同町で約90ヘクタールを焼く大規模山林火災が発生し、県南果樹部の試験ほ場にも火の粉が飛んだ。「貯水槽からバケツリレーして、必死で消火したよ」。焼け落ちた木もある中、ジュノハートの原木は奇跡的に難を逃れた。[br] 品種名は、ローマ神話で女性の結婚生活を守る女神「ジュノ」と果実のハート型を組み合わせた。ハート型は狙ったわけではなかったが、結果として強い個性となった。[br] 全国デビューの感慨に浸りつつ、「リピーターを増やすにはPRに見合った品質と量を確保し続けることが大切で、関係者の連携が欠かせない」と気を引き締める久保さん。運頼みではない、地に足の着いた産地化への取り組みは緒に就いたばかりだ。ジュノハートの原木を見つめ、ヒットを祈る久保隆さん=24日、五戸町