患者受け入れの十和田市立中央病院“見えない敵”と闘った53日間/感染管理の難しさ浮き彫り、マンパワー確保が重要

“見えない敵”と闘った53日間を振り返る丹野弘晃事業管理者=5月中旬、十和田市立中央病院
“見えない敵”と闘った53日間を振り返る丹野弘晃事業管理者=5月中旬、十和田市立中央病院
4月上旬、十和田市内の認知症グループホームに入居する高齢者や職員が新型コロナウイルスに感染し、5月末までに計14人の患者を受け入れた市立中央病院。医療従事者らは細心の注意を払いながら治療を進めたが、看護師への院内感染が発生し、一般診療の縮小.....
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 4月上旬、十和田市内の認知症グループホームに入居する高齢者や職員が新型コロナウイルスに感染し、5月末までに計14人の患者を受け入れた市立中央病院。医療従事者らは細心の注意を払いながら治療を進めたが、看護師への院内感染が発生し、一般診療の縮小を余儀なくされるなど感染管理の難しさが浮き彫りとなった。丹野弘晃事業管理者は「想定外の事態への対応や、病院運営上、厳しい決断をしなければならないことがあった」と述べ、マンパワー確保の重要性を強調。試行錯誤しながら“見えない敵”と闘った53日間を振り返った。[br] ▽感染症病床の増設 4月8日、市内の認知症グループホームに入居する高齢者1人の患者を初めて受け入れた。10日には同施設の職員3人の陽性が判明し、4床体制の感染症病棟は満床になった。[br] 施設内でさらに感染者が増える可能性があると考え、同日中に増床に着手。感染症病棟と同じ建物にある九つの個室を感染症用に充て、計13床に増やした。[br] 11日には新たに施設内で感染した高齢者5人を受け入れた。感染症に対応する看護師は当初6、7人だったが、一般の1病棟を閉鎖し、20人ほどに増やした。[br] ▽高まった感染リスク 認知症の高齢者は、日常のほぼ全てに介助が必要だった。看護師は食事、排せつ、全身清拭(せいしき)、たんの吸引など、一人のケアに1時間かかることもあった。[br] 看護師が病床に行く回数も多く、その度に新しい防護具を身に付ける必要があり、フェースシールドなどが不足。一時は消毒して再利用した時期もあった。[br] 「ここまで介助が必要な患者がたくさん入院するとは思わなかった。感染管理が難しく、結果的に感染リスクを高めた」(丹野管理者)。[br] 患者との長時間の接触やや資材の再利用―。これらの複合的な要素が重なり、27、28の両日、病棟で働く計4人の看護師への院内感染が分かった。[br] ▽人員の4分の1を投入 このころ既に施設職員3人は退院していたが、看護師4人が新たに入院したことで、入院患者は計10人となり、病床数がピークとなった。[br] 5月の時点で防護具の不足は解消されていたが、患者との長時間の接触を避けるため、一般のもう1病棟を閉鎖し、看護師を35人に増員。医師らを含め、院内の4分の1のマンパワーを投入した。[br] 一方、感染症病棟を維持するため、従来の機能を縮小せざるを得なかった。下の階にある健診センターは早い段階から休止していたが、閉鎖した2病棟に加え、院内感染の発生後は、外来や救急の受け入れも一時的に制限した。[br] この影響で、4、5月の医業収入も前年に比べて20%減収した。[br] ▽第2派に備え 5月30日に最後の患者が退院。入院期間は30~50代の患者で平均2週間、高齢者はその約2・5倍に上った。[br] 「第1波は当院にとって影響が大きかった。本来の医療を提供できなかった。ただ、組織としては少なからず成長した」と丹野管理者。[br] 今回の一連の対応を分析した結果、ゾーニング(隔離処置)の工夫次第で、感染防御しながら、一般診療をできるだけ制限なく運営する形態も見つかった。[br] 「高めの授業料になったが、感染防御と医療の質を両立し、第1波の教訓を生かして第2波に備える」と強調した。“見えない敵”と闘った53日間を振り返る丹野弘晃事業管理者=5月中旬、十和田市立中央病院