八戸市売市4丁目の小田要吉さん(87)が、地蔵や招き猫、城などさまざまな木工作品を、およそ30年にわたって作り続けている。運送会社を定年退職後に独学で始め、木工の魅力に取りつかれた。創作意欲はまだまだ衰えず、きょうも木と向き合い、思いを巡らせている。[br] きっかけは、旅先の山形県鶴岡市で見た国宝の羽黒山五重塔。定年退職した60歳の時、夫婦で訪問し、その美しさに目を奪われた。この感動を形にしたいとの思いが小田さんを突き動かした。[br] 仕事は長距離トラックの運転手で、木工の知識はほとんどなかったというが、知り合いの木材店から廃材を安く譲り受け、手探りで作り始めた。自分の記憶と旅先で撮った写真を頼りに製作し、1カ月ほどかけて完成させた。作品は1999年に同市類家2丁目の廣澤寺に寄贈し、現在も位牌堂に飾られている。[br] その後も、旅先で見て感動した物を自らの手で再現した。熊本城を制作した際には、松ぼっくりの鱗片(りんぺん)を屋根瓦に、砕いた貝殻を石垣に見立てるなど、表現の幅も広がっていった。[br] 元々神社仏閣を巡るのが好きなこともあり、地蔵や七福神も多く作っている。「(地蔵や七福神は)穏やかで柔和な表情を出すのがなかなか難しい」と奥深さを語る。欲しいと言われれば譲ってしまい、その度に作り足すため、今までに作った数は覚えていないという。[br] 木工を続けるのは「楽しいから。物を作るのが好き。生傷は絶えないけど」と変形した左手親指の爪を見ながら小田さんは笑う。最近では招き猫やなまはげなど、新たな作品にも挑戦しており、創作意欲は尽きない。