天鐘(6月3日)

新型コロナのニュースが報じられてから、新聞の感染者一覧に目を通すのが日課になった。新たな感染者は減っているが、全国の死者は千人に少しずつ近づいている▼それでも、よく見れば、その何倍もの人が既に退院や治療を終えていることも分かる。記事によると.....
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 新型コロナのニュースが報じられてから、新聞の感染者一覧に目を通すのが日課になった。新たな感染者は減っているが、全国の死者は千人に少しずつ近づいている▼それでも、よく見れば、その何倍もの人が既に退院や治療を終えていることも分かる。記事によると青森県の入院患者がゼロになった。医療関係者の献身的な治療があってこそと、改めて頭の下がる思いである▼コロナに感染したフリーアナウンサーの住吉美紀さんがラジオで入院生活を振り返っていた。「弱気な私を助けてくれたのは病院の方々の優しさでした」。看護師の励ましに号泣したという。大切な命の重さを実感しての生還である▼「病に対する最大の処方は希望である」との言葉を思い出す。「大丈夫ですよ」の一言、添えられた手の温かさ。絶望のベッドの中でそんな医療の「ぬくもり」に救われたという人も少なくあるまい▼この人は希望の言葉を聞いたのだろうか。京アニ事件で逮捕された青葉真司容疑者(42)である。全身大やけどを負いながら一命を取り留めた。今、静かに取り調べを受けるが、詳細な動機についての言及はまだない▼自分の声が出た時には涙したという。もしかしたら、そのとき初めて命の意味というものを知ったのかもしれない。だとすれば、あの36人の命にどう向き合うのかと問わずにいられない。生き延びた彼が語るべきことは多い。