6年以上にわたる使用済み核燃料再処理工場(六ケ所村)の審査で浮き彫りになったのは、事業者の日本原燃が安全対策を全うするだけの力量を備えているのかという本質的な課題だ。審査書案の了承をもって疑念が解消したとは到底言えない。将来の工場完成と操業を見据えれば、むしろこの先が原燃にとって正念場となる。[br] 安全最優先を掲げながら、原燃では相反する不手際が後を絶たない。十数年もの設備点検漏れを見抜けなかった3年前の雨水流入問題で異例の審査中断を迫られたにも関わらず、今年2月に保安規定違反とされた排風機の故障でずさんな実態を再び露呈。審査終盤には申請書類の記載不備も続発し、規制委関係者は「(過去の改善が)身になっていないのではないか」と指摘する。[br] 根底は一緒だ。個人の足らざる部分を、なぜ組織の力で補えないのか。過ちの一歩手前で、どうしてチェック機能が働かないのか。これらの改善は、原燃が最大の経営課題と位置付ける品質保証の向上に資するはずだ。約7千億円もの巨額を投じてハード対策をいくら並べ立てても、操る人と組織に能力が伴わなければ意味を成さない。[br] 地域との信頼は安全の積み重ねによって初めて構築される。「日々成長、改善していく職場風土を醸成し、一人ひとりが真のプロフェッショナルを目指す」。昨年1月の就任会見でこう語った増田尚宏社長に覚悟はあるか。信頼が一瞬で崩れ去ることを、原燃は長い歴史の中で身をもって知っているはずだ。[br] もとより、原燃が2021年度上期を目指す工場完成は厳しさを増す。中核を担う核燃料サイクル政策も不透明極まりない。果たして再処理工場の存在意義とは何なのか。青森県民は厳しい目を向けている。