天鐘(4月28日)

〈乳呑(の)ます牛のまなこにふるさとの 山はさかさまに映りてゐにけり〉。階上村(当時)出身の歌人、木村靄村(あいそん)(忠蔵)が「臥牛(がぎゅう)山」とも呼ばれる故郷の階上岳を詠んだ歌である▼標高740メートルの8合目、大開平に歌碑がある。.....
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 〈乳呑(の)ます牛のまなこにふるさとの 山はさかさまに映りてゐにけり〉。階上村(当時)出身の歌人、木村靄村(あいそん)(忠蔵)が「臥牛(がぎゅう)山」とも呼ばれる故郷の階上岳を詠んだ歌である▼標高740メートルの8合目、大開平に歌碑がある。牛が寝そべるような稜線と、人を優しく包み込むような山容をモチーフにした郷愁誘う歌だ。久しく山にご無沙汰していたが、無性に会いたくなるこの頃である▼新型コロナウイルスで不要不急の「外出自粛」が求められている。コロナに怯(おび)えて引きこもっていると気軽に登っていた頃が懐かしい。久々に―と腰を上げようとしたら、日本山岳4団体が登山の自粛を表明した▼大型連休中、都市から地方の山々を目指せば感染が拡散、遭難でもしたら地域医療の崩壊にも。小屋泊を伴う高山を念頭にした対応のようで、尤(もっと)もである。続いて自治体は県境を跨(また)ぐ移動の自粛を打ち出した▼階上岳は南は岩手の山々に繋(つな)がる別名・種市岳。北奥羽に跨がる分かち難い故郷の山だ。高山とは違い「来るな」や「来て」とも言いにくい。そこで階上町は登山口に「3密回避」の紙を張った。苦肉の妙案である▼気流の影響で歩きは4・5メートル、ジョギングは10メートルの間隔が欲しいとか。軽登山でも休憩や食事の際の会話、すれ違いには密集、密接のリスクもある。例え低山でも3密回避を心掛け、残る数少ない自然環境を大切に使いたい。