【新型コロナ】越境自粛要請 県境またぐ北奥羽は分断?

青森県と岩手県をつなぐ国道45号。県境を越えて車が行き交う=22日
青森県と岩手県をつなぐ国道45号。県境を越えて車が行き交う=22日
大型連休中に新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、青森、岩手両県知事らは、住民に県境をまたぐ移動の自粛を要請した。ただ、八戸市を中心とする「北奥羽地方」は青森県南のみならず、岩手県北も含んでおり、住民は日ごろから買い物や通勤・通学、通院な.....
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 大型連休中に新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、青森、岩手両県知事らは、住民に県境をまたぐ移動の自粛を要請した。ただ、八戸市を中心とする「北奥羽地方」は青森県南のみならず、岩手県北も含んでおり、住民は日ごろから買い物や通勤・通学、通院などで県境を越えて相互に行き来している。今後も感染拡大が続けば、さらに厳しい対応が求められる可能性もある。県境をまたぐ一体の圏域は、分断されてしまうのだろうか―。[br] 経済や教育、医療などで一つの圏域を形成している北奥羽。日ごろ、八戸の企業や学校に通う岩手県北の住民は多く、逆に週末になれば青森県南から県北の産直施設や温泉などに大勢の住民が向かう。圏域が分断されれば、住民生活への影響は計り知れない。[br] 新型コロナウイルスが圏域に落とす暗い影―。八戸市内で複数の感染者が確認された一方で、岩手県ではいまだにゼロという点も大きい。定期的に八戸市内に通院する二戸市の40代女性は「予防対策はしているとは思うが、漠然とした不安がある」と明かす。[br] 実際、岩手県側の住民には「八戸との往来を制限すべき」との声がある。一方で八戸側も心境は複雑。市内の無職男性(69)は「『八戸ナンバー』の車で岩手を走るだけで、厳しい目を向けられないか」と話す。[br] 関係性の深い地域の中で、県境を越えた往来を制限した場合、日常生活は成り立つのか。この問いに対し、北奥羽地方の行政関係者は異口同音に「NO」との認識を示す。[br] 北奥羽の場合、地理的に見ると洋野町や軽米町などの住民の大多数が「不要不急」ではなく「必須」で八戸へ行く機会が多い。[br] 久慈市の遠藤譲一市長も「久慈の生活圏は八戸にある。通院や通学、買い物で困る市民がたくさん出る。移動を制限することはできないだろう」と指摘する。[br] そもそも、青森、岩手両県知事が政府の緊急事態宣言を踏まえて打ち出した措置でも、通院や生活必需品の買い出し、通勤や通学などは「不要不急の外出」には当たらないとの大前提があるという。[br] 東北と新潟の7県知事らが緊急共同宣言を出した24日の取材でも、青森、岩手両県の担当課は、自粛要請は旅行などのケースを想定していると説明。住民が日々の生活を送る上で必要な移動や外出を制限したり、県境で生活圏を分断したりすることはない―との認識を示す。[br] 八戸市の小林眞市長も必要な両県の往来は「全く問題ない」と強調。まずは密接、密集、密閉の「3密」を避けるなどの対策を講じる重要性を訴える。[br] 県境を越える移動について、久慈市の70代男性は「県北の住民にとって、八戸は盛岡よりも身近で、日ごろから行き来している。県境にこだわらず、生活実態に即した一つの地域として、協力して感染対策に取り組んだ方がいい」。[br] 新型コロナに絡む県境越えの自粛要請は、北奥羽という存在を改めてクローズアップさせた。同時に、感染防止対策に圏域が一体となって取り組むという課題も突きつけている。青森県と岩手県をつなぐ国道45号。県境を越えて車が行き交う=22日