時評(3月11日)

東日本大震災から11日で9年となる。東北の復興にこれまで30兆円を超える国費が費やされてきた。だが、まだ全国で4万人以上が避難生活を余儀なくされている。 多くの犠牲者を出した震災からは、さまざまな問題が指摘されてきた。その一つが学校の安全の.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 東日本大震災から11日で9年となる。東北の復興にこれまで30兆円を超える国費が費やされてきた。だが、まだ全国で4万人以上が避難生活を余儀なくされている。[br] 多くの犠牲者を出した震災からは、さまざまな問題が指摘されてきた。その一つが学校の安全の課題だ。昨年、大川小訴訟で行政側に高度な安全確保の義務を認めた判決が確定し、裁判で得られた教訓が今後の防災取り組みへの指針となった。問題点を一つ一つ確実に解決し、防災体制を向上させなければならない。[br] 宮城県石巻市の市立大川小は地震発生後、児童が教員らの指示で校庭に40分以上とどまったため、高台に避難するのが遅れて津波に襲われ、児童74人が犠牲になった。裁判では災害時、児童の安全を守る上で学校や市の教育委員会にどこまで責任があるのかが争点になった。[br] 2018年4月の仙台高裁二審判決は、学校側が危機管理マニュアルに避難場所や経路を定めなかったことについて「津波から児童を避難させられるよう、安全を確保する義務を怠った」と判断した。不備を是正しなかった市教委の過失も認めた。昨年10月、最高裁が県と市の上告を退け、二審判決が確定している。[br] 事前に防災対策をきちっと整備しておく責任を学校側に求めたことは、今後の災害を考える上で大きな意味を持つ。判決は「地区住民よりもはるかに高いレベル」の防災知識が教職員に必要だったと指摘している。[br] 学校の現場では「そこまで求められるのは厳し過ぎる」という声もあるといわれる。だが、そうしなければ児童の命を守れないのが現実だ。大川小の事例はそのことを如実に示している。二度と同じような悲劇を起こさないために国を挙げて、学校の安全を確保する対策を進めなければならない。[br] 東日本大震災の際、外部から専門家を招いて津波が起きたとき、具体的に避難する方法などを学習した学校では一人も犠牲を出さなかった事例があった。やはり事前の準備が必要なのである。[br] 防災教育を義務化し、必修とすべきである。学ぶ児童・生徒はもとより、教える教職員も必然的に「高いレベル」の防災知識が身に備わるはずだ。現在でも各地の教育委員会で研修会を開催しているが、さらに全国規模で統一した研修が必要だ。[br] 南海トラフ巨大地震が起きれば、最悪30万人以上の犠牲者が出ると予測されている。日本の将来は、防災にどれだけ国力を注げるかに懸かっている。