時評(3月9日)

新型コロナウイルスの感染拡大に関連し、2月末に全国でトイレットペーパーやティッシュなどの紙製品が品切れとなる事態が発生した。青森県内でもスーパーやドラッグストア、ホームセンターなどで品薄状態に。誤った情報が拡散し、広範囲にパニックを引き起こ.....
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 新型コロナウイルスの感染拡大に関連し、2月末に全国でトイレットペーパーやティッシュなどの紙製品が品切れとなる事態が発生した。青森県内でもスーパーやドラッグストア、ホームセンターなどで品薄状態に。誤った情報が拡散し、広範囲にパニックを引き起こした。[br] 発端は「紙製品は中国に原材料を依存しており、マスクの次に不足する」という趣旨のインターネット上の情報という。[br] 騒動に対し、日本家庭紙工業会は「製品の大半は国内生産で通常通り生産、供給できる」「在庫は十分ある」などと、消費者に冷静な購買を呼び掛ける異例の対応を取った。政府も収束に向けて動いた。実際に3月に入ってからは店頭の品不足が徐々に解消され、事態は沈静化に向かっているようだ。[br] 見えないウイルスの感染拡大で世間は動揺している。今回のパニックは、あいまいだが現実味のある情報が引き金となり、不安から身を守る行動が集中した結果であろう。物流の動きが少ない週末に重なったこともあり、騒ぎが大きくなった。[br] 青森県内でも、ネット上の情報が、さらに人の伝聞で広がった。ある人は誤情報と理解していながら、「無くなったら困る」と強迫観念に駆られて店を回った。ある人は食料品の買い物で店を訪れ、紙製品を求める行列を目の当たりにし、反射的に購入したという。[br] マスクの供給が需要に追い付いていない現実も、買いだめを助長した。その結果、必要な家庭がなかなか買えないケースもあったようだ。[br] 物資の備蓄は危機管理上、推奨されてはいる。工業会が騒動を受けて示した例によると、一般的なトイレットペーパーに関して、1カ月の平均利用量は4人家族で16ロール程度だという。程度に違いはあるだろうが、生活に必要な量を正確に把握し、現状と照らし合わせた上で、過剰な購入を控えるよう努めたい。[br] 一方、工業会が供給の状況や製品の利用量を発信したように、人々に必要な情報を正しく分かりやすく伝えることは、混乱を鎮める何よりの有効策であろう。国や自治体も工夫を凝らし、事態に即した情報を積極的に発信すべだ。[br] コロナ問題の出口が見えずに不安は広がる一方だが、そのような時であるからこそ冷静に対応し、確かに情報を見極めるよう心掛けたい。たとえ善意による行動だとしても、不正確な情報の拡散を慎むことは指摘するまでもない。