米大統領選の民主党候補指名争いは、14州の予備選などが集中するスーパーチューズデーで、中道派のバイデン前副大統領が南部など10州で勝利し、一時の劣勢からの「復活」を印象付けた。[br] 首位を走ってきた左派のサンダース上院議員の快走に歯止めがかかり、指名争いは2強対決の構図となった。[br] 候補が絞られたことで、政策の違いや、共和党のトランプ大統領への挑戦姿勢がより見えやすくなった。党大会まで2強で政策論争を深め、競い合ってほしい。[br] 今回のスーパーチューズデーは前回とは一変した。最大の代議員数を持つカリフォルニア州(415人)が加わったからだ。指名獲得には、各州に割り当てられた代議員計3979人の過半数を得ることが必要。同州の参戦で、その約3分の1が決まるまでになった。この日が指名争いを左右する「天王山」といわれるゆえんだ。最大の焦点は、本命視されながら緒戦の3州で低迷したバイデン氏がよみがえり、サンダース氏の勢いにストップを掛けるかだった。[br] 結果はバイデン氏が事前の予想を超える10州で勝ち、獲得代議員数も大幅に増やした。[br] バイデン氏勝利の一因は黒人票を取り込んだことだ。直前に選挙戦からの撤退を決めたブティジェッジ前サウスベンド市長らがバイデン氏への支持を表明したことも大きかった。[br] だが、バイデン氏が独走態勢に入ったとは言い難い。バイデン氏が「この国を(トランプ大統領から)取り戻すために立ち上がろう」と勝利宣言したのに対し、サンダース氏は「旧態依然とした政治ではトランプ氏には勝てない」と批判、あくまでも選挙運動を続行する構え。2強対決は7月の党大会までもつれ込むこともありそうだ。[br] この構図は詰まるところ、既存の政治的枠組みを代表するバイデン氏と、それを破壊しようとする自称“民主社会主義者”のサンダース氏との戦いだ。共和党では前回、支配体制を徹底的に批判したトランプ氏が党指名を獲得、大統領に当選した。[br] 民主党主流派は、サンダース氏ではあまりに過激でトランプ氏に勝てないと懸念、「勝てる候補」としてバイデン氏で一本化しようとしているようだが、党利党略が過ぎると、有権者離れを引き起こしかねない。[br] 2強となった両氏が有権者の関心が高い健康保険問題や気候変動などの政策を活発に議論、競い合うことこそトランプ氏と渡り合える道だ。