時評(2月29日)

新型コロナウイルスによる肺炎が各地で散発的に拡大している。感染経路をたどれない患者も増えて流行の恐れが強まり、対策の局面は変わった。感染急拡大の抑制に努めながら、重症者の救命に全力を尽くす時だ。 「これから1~2週間が急速な拡大か終息かの瀬.....
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 新型コロナウイルスによる肺炎が各地で散発的に拡大している。感染経路をたどれない患者も増えて流行の恐れが強まり、対策の局面は変わった。感染急拡大の抑制に努めながら、重症者の救命に全力を尽くす時だ。[br] 「これから1~2週間が急速な拡大か終息かの瀬戸際だ」と専門家会議は警鐘を鳴らした。これを受けて政府は25日に基本方針を示した。26日、安倍晋三首相は2週間のイベント自粛を求め、27日には全国の小中高校に春休みまでの臨時休校を要請した。法的根拠がないまま基本方針よりも踏み込んだ政治決断で、場当たり感は否めない。[br] 感染症は科学を基に適切に対処することが必要だが、行き過ぎて社会を混乱させる危険を常にはらむ。新型肺炎の状況は地域で異なる。患者が増えている北海道や千葉県で休校はやむを得ないが、感染者がいない県まで休校させるのは異常だ。全国休校の得失を熟慮したのか。首相は丁寧に説明すべきで、各自治体は柔軟に対応してほしい。[br] 新型肺炎は重症化率と致死率が、2002、03年に中国などで流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)より低いが、インフルエンザより高い。感染力が強く、感染者はSARSの10倍を超えて五大陸に広がり、世界の脅威になりつつある。[br] 大半の感染者は軽症か無症状で済むのに対し、高齢者や持病がある人は肺炎が重症化しやすい。症状がない潜伏期にうつす可能性もあって、拡大の阻止が難しい新興感染症だ。手洗いやせきエチケットなどの徹底で集団感染の連鎖を断ちたい。[br] 新型コロナウイルスの検査態勢は遅れた。これが国内で感染者数が少ないことの背景にある。来週にも検査が公的保険の適用になり、医師の判断で検査できるようになる。検査の増加は新型肺炎の見えない感染実態を把握するのに役立つだろう。[br] 政府の基本方針は、患者が増えた場合、軽症の風邪症状なら受診を控えて自宅での安静・療養を原則とした。院内感染の機会を減らし、医療資源を重症者に集中するため重要な提言といえる。医師への電話による処方依頼も選択できる。人混みを避けるには時差通勤や在宅勤務も望ましい。[br] 保健所の相談センターに電話がつながりにくい。態勢を拡充し、感染が疑われる患者の誘導先の名称を新型肺炎外来などに変更した方がよい。感染症への対応は国の文化レベルを反映する。風説に惑わされず、偏見や差別を持ち込まず、感染者らを支える総合的対策を進めたい。