時評(2月21日)

企業や行政機関の不正行為を内部から通報し、調査や是正を求める社員や公務員らを守る公益通報者保護法の改正案が、3月にも国会に提出される見通しだ。自民党の消費者問題調査会が改正への提言をまとめ、消費者庁はこれらを基に改正法案を作成する方針。自民.....
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 企業や行政機関の不正行為を内部から通報し、調査や是正を求める社員や公務員らを守る公益通報者保護法の改正案が、3月にも国会に提出される見通しだ。自民党の消費者問題調査会が改正への提言をまとめ、消費者庁はこれらを基に改正法案を作成する方針。自民党の提言は、通報に関する秘密保持違反に罰則を設けるなど、制度の機能担保へ一歩踏み出している。[br] だが企業などが、通報者への処遇で「報復」する事例は後を絶たない。提言は不利益な扱いをなくすための課題とされる罰則の新設などは明言しておらず、なお不十分な内容といえる。[br] 企業や行政機関の不正発覚は内部通報がきっかけになる場合が多く、「告発者」の保護は国民生活を守ることに通じる。消費者庁には、不正を訴えた人を守る制度が実効を上げるよう改正法案を作成してもらいたい。[br] 公益通報者保護法は雪印食品の牛肉偽装や三菱自動車のリコール隠しなど不祥事続発を機に、2006年4月に施行された。企業が設けた不正告発窓口などに通報した社員らに、解雇のような不利益な扱いをするのを禁じている。[br] だが保護対象を現役の社員らに限定し、勤務先以外の監督官庁やメディアなど外部に通報するには、不正と信じる合理的理由や証拠隠滅の恐れがあるなど厳格な条件を求める。報復人事などへの罰則がない点も問題視され、改正が懸案だった。[br] 自民党の提言は保護する通報者をOBや役員にまで広げ、組織の通報担当役員や社員に罰則付きの守秘義務を課すなどとする。半面、解雇や降格といった通報者に不利な処遇に関しては「是正に向けた取り組みを進める」にとどまっている。[br] 18年末、内閣府消費者委員会の専門調査会報告が、報復した企業への行政による勧告や企業名公表を提案したのに比べても後退している。[br] 07年、上司の不正を社内通報し、配置転換を命じられたオリンパス社員は配転無効訴訟などで争い、提訴から実質勝訴の和解まで約8年も費やした。14年に国が敗訴した海上自衛隊いじめ自殺訴訟でも海自側の文書隠しを内部告発した自衛官の処分が一時検討された。[br] こうした処遇を恐れ、勤務先への不正通報をためらうケースも多いとみられる。通報制度を「絵に描いた餅」にしないよう、罰則規定や外部への通報条件の緩和などが必要ではないか。経済界からの反発も想定されるが、消費者庁には国民を守る姿勢を期待したい。