天鐘(2月14日)

大型クルーズ船ではないが、30年前に原子力船「むつ」の初試験航海で3週間余の“船旅”を経験した。放射線漏れの“前科”があり不安な旅だったが、情報が長く遮断されることへの恐怖心は想定外だった▼機関の不具合で行程が1週間延びた。と言っても公海を.....
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 大型クルーズ船ではないが、30年前に原子力船「むつ」の初試験航海で3週間余の“船旅”を経験した。放射線漏れの“前科”があり不安な旅だったが、情報が長く遮断されることへの恐怖心は想定外だった▼機関の不具合で行程が1週間延びた。と言っても公海をグルグル回り、原子力船のお墨付きをもらうだけの旅で、島影一つ見えなかった。丸窓付きの6畳に2段ベッドが二つ。小さな机で「乗船記」を書いた▼仕事は昼頃で終わり、後は読書か花札。唯一の情報は衛星を介して届く自分らが書いた記事だけ。世界で何が起きているのか。情報から隔絶されることへの不安が募った▼横浜港に停泊しているクルーズ船で、新型コロナウイルスに怯(おび)えながら息を潜めている乗員乗客の不安はいかばかりか。夢のクルーズが一転、見えない敵との戦いを強いられ、戦況は悪化の一途を辿(たど)っている▼食事担当の乗員に加え、プロの検疫官も見えない敵にやられた。国はやっと高齢者ら弱者対策に重い腰を上げたが、乗員乗客が望む「全員検査」を早期に実施し、晴れて平穏な日常が取り戻せるよう措置すべきだ▼一連の対応に米ロの外交筋は「狭い国土で段階的な警戒では甘すぎる」「全てが場当たり的」と口を揃(そろ)える。国には耳の痛い指摘だが、ウイルスは政治の事情などお構いなしだ。事態は深刻の度を増している。確たる情報と覚悟が知りたい。