【緊急事態宣言対象追加】異議想定外、政権迷走 地方も戸惑い 

 緊急事態宣言を巡る首相や専門家らの発言(似顔  本間康司)
 緊急事態宣言を巡る首相や専門家らの発言(似顔  本間康司)
新型コロナウイルス緊急事態宣言への対象追加を巡り、菅政権の方針が基本的対処方針分科会による想定外の「異議」で覆った。変異株の猛威に対する危機感が各地に広がる中でも、緩めの対策で乗り切れると踏んだ菅義偉首相。「楽観シナリオ」が瓦解(がかい)し.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 新型コロナウイルス緊急事態宣言への対象追加を巡り、菅政権の方針が基本的対処方針分科会による想定外の「異議」で覆った。変異株の猛威に対する危機感が各地に広がる中でも、緩めの対策で乗り切れると踏んだ菅義偉首相。「楽観シナリオ」が瓦解(がかい)した果ての迷走が、今後の求心力に影を落とすのは必至だ。地方側も戸惑いを隠せない。[br][br] ▽異例[br] 「専門家が言うなら、それでいい」。14日午前、官邸で急きょ開かれた関係閣僚会合。首相はこう西村康稔経済再生担当相らに語り、方針変更を認めた。官邸内で「全く予想しなかった」と驚きの声が相次ぐほど、今回は異例の経過をたどった。[br][br] 首相は12日の時点で、北海道を宣言対象に追加しない方針を固めていた。西村氏は13日の記者会見で、追加の是非を問われ「北海道は広い」と指摘。道内全域での強い措置に慎重姿勢を示した。[br][br] 同日夕の閣僚会合では、岡山、広島など5県へのまん延防止等重点措置を適用するとの方針が確認されたのみ。報告を受けた自民党幹部も「経済的影響が少なくて済む」と賛意を示していた。[br][br] ▽集中砲火[br] 事態が動いたのは、その後だった。[br][br] 「分科会は荒れそうだ」「辞任覚悟で方針見直しを訴えるメンバーが出てくるかもしれない」。一部の専門家から水面下で方針再検討を求める声が届き、政府内でこんなささやきが広がった。[br][br] 鈴木直道・道知事からも直談判があった。13日夜、西村氏に電話をかけ、感染が深刻化している札幌市に限った発令を要請。それでも「諮問案がひっくり返されることはない」(官邸筋)との見立ては揺らがなかった。[br][br] だが14日午前の分科会会合は「医療機関の窮状は大変なもので看過できない」(釜萢敏・日本医師会常任理事)などと反対論が続出した。集中砲火を浴びた西村氏は、閣議のタイミングで途中退席し官邸へ。閣僚会合で首相に対し「かなり厳しい」と訴え、宣言追加か、結論持ち越しかの2択しかないと報告した。[br][br] 首相は北海道のほか、感染者急増が指摘されていた岡山、広島の追加を即決。途中経過は関係ないと言わんばかりに「最終的に感染収束へ結果を出せばいい」と、周囲に強がるのが精いっぱいだった。閣僚会合はわずか約10分だった。[br][br] 専門家が首相に待ったを掛けた背景には、繰り返してきた「警告」が十分生かされていないとの強い危機意識があった。7日の前回分科会で、医療が逼迫(ひっぱく)する北海道を宣言に加えるべきだとの意見が複数出ていた。12日の厚生労働省専門家会合も、3道県への対策強化の必要性を強調。だが諮問案には反映されず、今回の「異論噴出」につながった面は否めない。[br][br] ▽寝耳に水[br] 地方側も難しい判断を強いられた。面積が広く、感染状況に濃淡がある北海道は全域を対象にした宣言に消極的。鈴木知事による西村氏への電話は札幌市に求められたためだった。道幹部は「国との調整はついていなかった」と、ドタバタぶりをにじませる。[br][br] 「寝耳に水だ」。まん延防止等重点措置の適用へ動いていた岡山県関係者は口をそろえた。広島県の県議も「国に振り回され、見通しが立てにくい」と語った。[br][br] 一夜にして重大決定を一転させた首相。次期衆院選や自民総裁選をにらみ、今回の混迷ぶりが政権運営にマイナスに働くのは間違いない。中堅はつぶやく。「首相の判断はむらがある。コロナ禍をどう収束させようとしているのか国民にメッセージが伝わってこない」 緊急事態宣言を巡る首相や専門家らの発言(似顔  本間康司)