時評(5月14日)

水俣病が公式確認されてから65年になる。これまで熊本、鹿児島両県で計2283人が患者認定を受けたが、まだ約1400人が申請中で、救済を求める集団訴訟も各地で係争中だ。救済が遅れている要因は、法律で定められた住民の健康調査が実現していないこと.....
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 水俣病が公式確認されてから65年になる。これまで熊本、鹿児島両県で計2283人が患者認定を受けたが、まだ約1400人が申請中で、救済を求める集団訴訟も各地で係争中だ。救済が遅れている要因は、法律で定められた住民の健康調査が実現していないことにある。一日も早く調査を実施すべきだ。[br][br] 熊本県水俣市が水俣病を公式に確認したのが1956年。しかし国が公害認定し、原因のチッソ工場排水を止めたのは確認から12年後の68年だった。被害拡大を招いたのは、排水を規制しなかった国にも責任があると水俣病訴訟で認定されている。[br][br] 水俣病はチッソと国に責任があると分かっても被害救済は混乱を極めた。77年、国は手足の感覚障害に加え、視野狭窄(きょうさく)など複数の症状の組み合わせがあることを水俣病の認定基準とした。[br][br] メチル水銀で神経が侵される度合いにより重症から軽症までさまざまな症状がある。軽い症状の者を補償の対象から外すことに激しい反発が起きたのは当然だった。[br][br] 水俣病訴訟で2004年、最高裁判決は国の認定基準を大幅に緩和し、一定の条件と感覚障害があれば賠償を認めた。さらに13年の最高裁判決は感覚障害だけで水俣病と認定している。[br][br] こうした流れや被害者の声もあり09年、水俣病特別措置法が施行され、感覚障害だけで一時金が支給された。だが、水俣湾がある八代海の沿岸に住んだことがない人は外された。[br][br] 周辺の地域でも手足の感覚障害を訴える住民が多数おり、認定申請している人以外にも潜在的な被害者が存在すると指摘されている。特別措置法37条には住民の健康調査について「積極的かつ速やか」にするとし、そのために国が「手法の開発」をすると規定している。水俣病の患者・被害者団体も被害の全容解明に向けた健康調査を求める意見書を提出していた。[br][br] しかし、法施行から10年以上たっても調査が実現していない。昨年4月、小泉進次郎環境相が「具体的な開発時期をと問われると、答えることは現時点では困難」と発言している。[br][br] 国の怠慢を批判されたせいか、小泉環境相は同9月、調査手法について「今後1~2年をめどに検討する」と表明。磁気共鳴画像装置(MRI)などを用いる方法が研究開発されているという。[br][br] やっと、という感じである。被害者の高齢化が進んでいる。実施までの具体的な工程表を作成し、公表すべきだ。