北極圏を巡る米国とロシアの主導権争いが激化している。地球温暖化による海氷減少で航行できる範囲が広がり、軍事的重要性や埋蔵資源などの経済的権益が改めて脚光を浴びているためだ。20日には北極圏8カ国で構成する北極評議会がアイスランドで閣僚会合を開催、任期2年の議長国になるロシアのラブロフ外相はブリンケン米国務長官と個別に初会談も行うことになった。[br][br] 北極圏で最大の領土を持つロシアは近年、圏内各地で飛行場やレーダーなど軍事施設の建設を進めている。今年3月には原子力潜水艦3隻が北極海の半径約300メートルの海域で同時浮上。氷上に地上兵力が展開し、上空ではミグ31戦闘機2機が飛行する軍事演習を成功させた。[br][br] 北極海周辺では潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)搭載のロシア原潜が常時任務に就いている。氷の下に姿を隠す戦略原潜が作戦中の海域で姿を現すのは異例。ロシア国防省は原潜が厚さ約1・5メートルの海氷を破って浮上する映像をユーチューブで公開し、軍事的存在感を誇示した。[br][br] ショイグ国防相は4月に北方艦隊が司令部を置くセベロモルスクを視察し「北極海の資源と航路へのアクセスを巡る競争が激しさを増している」と指摘。米国と北大西洋条約機構(NATO)諸国が北極圏で軍事インフラ近代化を進めていると警戒感を示した。[br][br] 一方、米軍は氷が減少した北極を「紛争時の攻撃ルートにもなり得る」重要地域と位置付け、関連部隊の能力向上を図る。アラスカ周辺で今月実施した1万5千人規模の軍事演習には、原子力空母セオドア・ルーズベルトを中心とする空母打撃群も参加した。[br][br] 米ロのほか中国も北極圏での権益確保や、巨大経済圏構想「一帯一路」の一環として北極海航路の活用に意欲を示す。[br][br] ブリンケン氏は4月、「ロシアは温暖化を利用して北極圏での支配拡大を図り、中国も存在感を高めている」と述べ、対抗心をあらわにした。(共同=佐藤親賢)