天鐘(5月9日)

黒人奴隷制度の是非、基幹産業の在り方、連邦制への立場。19世紀の米国は、南部と北部の主張の違いが鮮明になる。地域間の利害対立を背景に勃発したのが南北戦争。激しい戦闘は1861年から4年も続いた▼北部が勝利し、奴隷制度は廃止となる。分裂の危機.....
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 黒人奴隷制度の是非、基幹産業の在り方、連邦制への立場。19世紀の米国は、南部と北部の主張の違いが鮮明になる。地域間の利害対立を背景に勃発したのが南北戦争。激しい戦闘は1861年から4年も続いた▼北部が勝利し、奴隷制度は廃止となる。分裂の危機を乗り越えた米国は、超大国へ歩みを進めた。一方、史上唯一の内戦の死者は60万人超で、2度の世界大戦を上回る。今に至る繁栄は大きな犠牲の上に成り立つ▼そんな戦渦で奮闘した女性たちがいたという。「マザーズデー・ワーク・クラブ」。もともとは衛生環境の改善を通じ、乳児死亡率の低減を目指した組織。南北の負傷兵を分け隔てなく、献身的に看護した▼率いたのは社会活動家のアン・ジャーヴィス。戦争が終結した後も、わだかまりを解き、融和を促すため、様々なイベントを企画する。分断がより深刻だった時代に、平和の礎を築いた偉大な一市民でもあった▼その遺志を後世に伝えようと、娘のアンナは母親の命日に合わせて、5月に教会で記念礼拝を開く。参列者にはカーネーションを贈った。兵士を悼み、慈愛を誓う「母の日」は、後に米国の記念日となる▼日本でも母の日は5月の第2日曜日。米国に倣い、戦後に定着した。その由来をたどってみても、やはり母親の存在は大きい。素直に気持ちを伝えて、共に食卓を囲んで。何気ない日常にも感謝したい。