75歳以上の医療費窓口負担に2割枠を新設する医療制度改革関連法案は、高齢化に伴って増え続ける現役世代の負担を抑える狙いがある。法案に反対する野党も「負担軽減は喫緊の課題」と理解を示すが、窓口負担が増すことにより高齢者が過度に受診を控えることを懸念している。[br][br] ▽異議なし[br] 「現役世代の医療費負担は重い。これを軽くするのは、議場の全員、異議のある人はいない」。7日の衆院厚生労働委員会で立憲民主党の長妻昭氏は、現役世代の負担を軽減する趣旨は理解しているとした。[br][br] 日本では75歳以上になると、仕事をしているかリタイアしているかにかかわらず、後期高齢者医療制度に加入する。窓口負担は原則1割で、現役並み所得(年収383万円以上)がある人のみが3割となっている。[br][br] 自己負担部分以外の財源は、4割が現役世代の保険料から捻出される「支援金」で賄われている。残りは75歳以上の保険料が1割、公費が5割だ。高齢者の医療制度だが、実態は現役世代が支える構造となっている。[br][br] 2022年からは人口の多い団塊の世代が後期高齢者になり始めるため、医療費の急増が見込まれる。75歳以上の医療費の総額が増えれば、現役世代の支援金も膨らみ、負担は一層厳しくなる。こうしたことから、一定の収入がある高齢者には負担する側に回ってもらおうという狙いだ。[br][br] ▽重症化[br] 月々の自己負担に上限額を設ける制度があるものの、窓口負担が2倍になる人もいる。立民、共産両党は「経済的な理由から受診を控え、病気が重症化する可能性がある」との理由から法案に反対。立民は原則1割負担を維持する代わりに、75歳以上の高所得者の保険料上限を引き上げて財源を捻出する対案を提出している。[br][br] 7日午後、国会前の路上では高齢者ら約50人が参加し、法案に反対する集会を開いた。マイクを握った男性は「75歳を過ぎれば月に必ず1回は病院に行く。高齢者の医療を理解しているのか。コロナ下でこんなことをやるのか」と訴えた。[br][br] 田村憲久厚労相は衆院厚労委で負担引き上げの影響を問われ「年収200万円以上の所得層であれば必要な医療は受けられるだろうということで、今回設定した」と理解を求めた。