憲法改正手続きに関する国民投票法改正案が国会提出から約3年を経て成立が確実となった。自民党は立憲民主党の修正要求を「丸のみ」して審議に区切りを付け、具体的な改憲項目を巡る議論に移りたい考え。一方、立民は「審議拒否」との批判を受ける懸念から採決に応じたが、自民が主導する改憲論議には慎重姿勢を堅持した。各党の溝は依然深い。[br][br] ▽安 堵[br] 「修正案に盛り込まれた事項に基づいて速やかに検討を進める」。自民の二階俊博幹事長は6日、国会内で立民の福山哲郎幹事長に対し、改正案の修正要求を全面的に受け入れる考えを伝えた。福山氏は謝意を示した上で「今国会での成立を約束する」と応じた。[br][br] 両氏の合意から約1時間後の衆院憲法審査会で、改正案は与党や立民などの賛成多数であっさり可決。与党国対幹部は「ほっとした。法案成立まで合意できて良かった」と安堵(あんど)の表情を見せた。[br][br] ▽ジレンマ[br] 立民が採決を容認した背景には、秋までに実施される衆院選で共闘を目指す国民民主党と、足並みがこれ以上乱れるのを避けたい思惑があった。国民民主は昨年11月にCM規制強化などを条件に改正案への賛成にかじを切り、翌12月には改憲草案の概要を策定する独自路線を打ち出した。[br][br] しかも改正案は公選法と投票の利便性をそろえる形式的内容で、改憲本体の議論とは異なる。立民には「何でも反対の党と見られる」(幹部)とのジレンマが増大した。[br][br] 憲法審の運営は政局を離れ、各党の合意を重視する伝統がある。採決先延ばしに国民民主からも批判が出て、国対筋は「もう採決を避ける理由がない」とこぼした。[br][br] 自民も修正を拒否すれば、6月の会期末までの成立が難しくなる事情を抱えていた。衆院選で保守層の支持を得るには、丸のみしてでも改憲へ実績を積み上げた方が得策との判断に傾いた。[br][br] ▽棚上げ[br] 自民は改正案の成立にめどが付いたことで、改憲論議に軸足を移す構えだ。6日の憲法審では、与党筆頭幹事を務める新藤義孝氏が、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ「緊急事態への対応は極めて優先度の高い改憲テーマだ」と強調。国民民主などからも同様の意見が出た。[br][br] 立憲主義に基づく憲法論議を掲げる立民は、コロナ禍に乗じた改憲論議に警戒感を隠さない。改正案には立民の修正要求で、CM規制などを巡って3年をめどに「必要な法制上の措置、その他の措置を講じる」との一文が加わった。奥野総一郎氏は6日の憲法審で「この措置がなされるまで改憲発議はできない」と主張。中堅議員も「これで3年間、改憲論議は棚上げだ」と狙いを明かした。[br][br] 日本維新の会の馬場伸幸幹事長は二階氏との会談で「立民は改憲論議をさせないための道具に使うのではないか」と修正案への懸念を伝え、採決で修正部分に反対した。共産党は「改憲の第一歩となる」と改正案に反対した。