道は違えど「いつか一緒に」 トランペット奏者2人、ジャンル越え競演

ジャズとクラシックの異なるジャンルでトランペットを奏でる類家心平さん(右)と辻村誠彦さん=29日、八戸市
ジャズとクラシックの異なるジャンルでトランペットを奏でる類家心平さん(右)と辻村誠彦さん=29日、八戸市
4月29日、2人の“異なる”トランペットの音色が八戸市内のホールに鳴り響いた。ジャズの第一線で活躍する同市出身の類家心平さん(45)と、地元八戸でクラシック音楽を探求する辻村誠彦さん(44)。同じ年に生まれ、学校は違えど吹奏楽部に所属し、互.....
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 4月29日、2人の“異なる”トランペットの音色が八戸市内のホールに鳴り響いた。ジャズの第一線で活躍する同市出身の類家心平さん(45)と、地元八戸でクラシック音楽を探求する辻村誠彦さん(44)。同じ年に生まれ、学校は違えど吹奏楽部に所属し、互いに意識し合ったかつてのライバルだ。別々の道へと進んだが、「いつか一緒に演奏しよう」と約束を交わし、ようやく訪れたジャンルの垣根を越えた競演の舞台。「あきらめずに音楽を続けてきたからこその時間」と話す2人は、新型コロナウイルスの影響で活動が制限される中、音楽ができる喜びをかみ締めた。[br][br] ともに小学生の時に運命の楽器、トランペットに出会った。そして、毎年開かれる吹奏楽コンクールや少人数のアンサンブルコンテストでは何度もしのぎを削り、互いを意識し合った。高校生になると交流も始まり、それぞれの技術を認めながら、楽器談義にも花を咲かせる仲となった。[br][br] 高校卒業後、類家さんは海上自衛隊音楽隊を経て、本格的にジャズの道へ。辻村さんはトランペットを置き、指導者として地元にある学校の吹奏楽部で指揮を振り、それぞれの目指す音楽へと突き進んだ。[br][br] そんな中、辻村さんに転機が訪れた。子ども向け講習会にトランペットの講師として招かれた際、楽器を吹きこなせていないことに気付いた。それと同時に浮かんだのが、活躍の場を広げる類家さんの存在。そして、沸き上がったあのころの思いとトランペットへの情熱。「まだまだ負けていられない」。[br][br] 大物アーティストとセッションを果たすなど、着々とジャズ界に存在を知らしめる類家さん。辻村さんはコンクールに参加し、上位入賞。各地でリサイタルも開催し、ライバルの背中を追い掛けた。5年ほど前に市内で再会した際に競演の約束を交わし、ついにコンサート当日を迎えた。[br][br] コンサートでは、辻村さんが先にクラシックの奥ゆかしい音色を披露。類家さんはテクニックを交えて観客をジャズの世界に引き込むなど、それぞれの持ち味を存分に披露した。[br][br] 互いにそれぞれのジャンルにも挑戦。辻村さんは「プロの前でやりづらいな」とぐちをこぼすと、類家さんはクラシックにジャズの即興演奏を織り交ぜて笑いを誘った。ステージでは「つっくん」「心平」と呼び合い、身も心も演奏を楽しむかつての“音楽少年”に戻っていた。[br][br] 演奏後、辻村さんは「ジャンルは違うが、楽器で通じ合えるから音楽はやっぱり楽しい」と振り返る。[br][br] 東京から当日入りした類家さんは「コロナの影響で開催するかぎりぎりまで迷った」という。それでも開催に踏み切ったのは、今回のステージを自身が待ち望んでいたから。「どちらかが音楽をあきらめていたらこの場はなかった。音楽のすばらしさを教えてもらった」。出会って30年以上。トランペットがつなぐ2人の関係はこれからも続く。ジャズとクラシックの異なるジャンルでトランペットを奏でる類家心平さん(右)と辻村誠彦さん=29日、八戸市