与野党内で対中制裁論が広がっている。4月上旬には自民、立憲民主など各党有志がそろう超党派議員連盟が発足。人権侵害を理由とした制裁を可能にする立法措置の検討を進め、慎重な政府に働き掛ける構えだ。次期衆院選をにらみ、人権問題や海洋進出で対中批判を強める世論の支持を得たいとの思惑が垣間見える。だが制裁を発動すれば、中国の猛反発を受ける危うさも漂う。強大化した中国とどう向き合うべきか。各党のバランス感覚が試される。[br][br] ▽懸 念[br] 議連の設立総会直前の4月6日朝。保守派の議連幹部の携帯電話に、公明党の三浦信祐参院議員から連絡が入った。「先生、参加できることになりました」。三浦氏は前日夜、欠席の可能性を伝えたばかりだった。親中的と言われる公明党の参加は難しいとの思いを強めていた幹部は「公明も世論動向が気になったようだ」と振り返る。[br][br] 公明党と支持母体の創価学会は、中国との関係が深い。公明党の山口那津男代表は17年、習近平国家主席と会談し、当時の安倍晋三首相から託された親書を手渡した。創価学会の池田大作名誉会長は2008年、来日した当時の胡錦濤国家主席と会談し、中国との太いパイプを印象付けた。[br][br] その公明党が態度を微妙に変えたのは、中国に厳しい姿勢で臨まなければ「平和と人権の党」の看板に傷が付く懸念を感じたためだ。内閣府が今年2月に発表した世論調査では、中国に「親しみを感じない」「どちらかというと親しみを感じない」が計77・3%に上った。こうした世論の動きを、他の政党も強く意識する。[br][br] ▽躍 起[br] 議連の共同代表は、安倍政権が15年に安全保障関連法を成立させた当時の防衛相だった自民党の中谷元氏と、制裁発動に積極的な国民民主党の山尾志桜里氏。保守色が濃い議連の総会には、共産党やれいわ新選組の議員の姿もあった。[br][br] 共産党は対中批判のトーンを強める。志位和夫委員長は3月の記者会見で「深刻な人権侵害があった場合、経済制裁は当然だ」と踏み込んだ。背後からは「有権者から『日本共産党も中国共産党と同じような体質の党ではないか』と思われるのは困る」(党関係者)との台所事情が透ける。[br][br] 自民党の保守系も躍起だ。中国寄りと言われる二階俊博幹事長への保守層の不満を和らげなければ、衆院選に影響するとの不安がある。日米首脳共同声明への「台湾」明記に中国が反発した直後の4月18日、同党の佐藤正久・外交部会長は「中国に日和ひよることはない」とツイート。返信欄には「頑張ってください」などの声援があふれる。[br][br] ▽警 鐘[br] 加速する対中強硬の流れ。その先に待つのは何か。宮本雄二みやもとゆうじ・元駐中国大使は「中国には歴史問題を背景とした複雑な対日感情がある。制裁に踏み切れば、中国から10倍返しの報復を受ける恐れがある。その覚悟を持たないと道を誤る」と警鐘を鳴らす。