関西電力の40年を超えた原発の運転に地元福井県の杉本達治知事が同意した。高浜原発では最大4基が運転できるようになる。1カ所に複数の原子炉がある「集中立地」の場所は、自然災害などで同時に被災し、連鎖的に被害が拡大するもろさを抱え、2011年の東京電力福島第1原発事故では高いリスクが浮き彫りになった。事故時の住民避難を含め懸念はぬぐえない。[br][br] ▽収束困難[br] 第1原発事故の国会事故調査委員会の報告書は、原子炉が6基あったことが事故の収束を困難にした一因と指摘した。[br][br] 2号機に電源供給しようとケーブルの敷設作業をしたが、1号機の建屋が爆発してがれきが飛散し、ケーブルを損傷した。4号機の建屋が爆発したのは、3号機から配管を通じて水素が流入したことが原因とみられる。[br][br] 第1原発の12キロ南の福島第2原発も地震や津波で被害を受けたが、第1原発の爆発や放射性物質放出により、屋外での復旧作業を一時中断するなどの影響があった。[br][br] ▽「対処厳しい」[br] 高浜原発は3、4号機が稼働済みで、運転開始から40年を超えている1、2号機が加わることになる。原子力規制委員会は「4基同時の事故発生を想定しても、それぞれの号機で独立して対応できるように設備や手順、人員を備える方針を確認した」と説明する。[br][br] ただ、更田豊志委員長は以前「3基、4基といった多数基の場合は、同時発災の対処が非常に厳しくなるのは事実だ」と認めている。28日の記者会見では「多数基があることの影響を完全に抑えきったというのは慢心だ。事業者は十分注意する必要がある」と述べた。[br][br] 日本の原発は集中立地の場所が多いが、疑問視する意見も出ている。東電柏崎刈羽原発の地元、新潟県柏崎市の桜井雅浩市長は17年、6、7号機の再稼働への同意条件として、1~5号機のいずれかの廃炉計画を出すよう東電に要請した。[br][br] 福井県では、高浜以外に大飯原発2基が稼働済みで、美浜原発1基も新たに同意を得た。原子力コンサルタントの佐藤暁氏は「原子炉が増えると発電所全体の事故リスクは高くなる。若狭湾に集中しすぎており、大地震があればいろいろなトラブルが同時多発的に発生する」と指摘する。[br][br] ▽避難先[br] 3カ所の原発のうち最も近い大飯と高浜の距離は14キロ。事故時に住民避難の可能性がある原発の30キロ圏は重なる地域も多い。原発に挟まれた地域の住民は、避難の過程でいずれかの原発に近づく形となる。[br][br] 内閣府などは昨年、両原発の同時事故を想定して住民避難計画を改定した。担当者は「避難先は重複せずに確保しており、対応できる」と説明する。高浜の5キロ圏に住む自力避難が難しい高齢者や障害者などの「要支援者」の避難先を、大飯の30キロ圏内から圏外に変更した。[br][br] だが支援要員や福祉車両は確保できるか。地元の福祉施設関係者は「2カ所で事故が起きれば、1カ所より全体の避難者は増えるはずだ。職員だけでは手が足りず、手伝ってくれる人がすぐに来られるだろうか」と不安を口にする。