【東京五輪】コロナ変異株、大会に暗雲 観客数の上限決定先送り

 東京五輪・パラリンピックが直面する課題
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開幕まで3カ月を切った東京五輪に新型コロナウイルス変異株の暗雲が垂れ込める。大会組織委員会と政府、東京都、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)による28日の5者協議では、焦点の観客数の上限決定は先送りに。緊急.....
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 開幕まで3カ月を切った東京五輪に新型コロナウイルス変異株の暗雲が垂れ込める。大会組織委員会と政府、東京都、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)による28日の5者協議では、焦点の観客数の上限決定は先送りに。緊急事態宣言下での看護師確保の要請や、外国選手らに対する待機措置の緩和などが、世論の不信の連鎖を招く状況に陥っている。強まる逆風の中、時間は刻一刻と少なくなっている。[br][br] ▽足かせ[br] 28日、政府や組織委は変異株に対応した対策強化を発表した。選手やコーチのほか、選手と定期的に接触する大会関係者には原則毎日検査を実施することが柱。来日する選手、大会関係者は厳しく行動範囲を制限され、一般市民との接触を避けることが求められる。IOCのバッハ会長は5者協議で「日本国民に対するリスクを最小化し、国民に安心していただけると思う」と強調した。[br][br] ただ、こうした措置が国内世論を好転させるのは期待薄だ。不安解消への「切り札」と期待されるワクチンは、国内では65歳以上の高齢者接種が12日に始まったばかり。ワクチンなしでも検査などを徹底し、安全に大会を開催するのが組織委の立場だが、政府筋は国民の理解を得るには「(一般への)接種を前倒しに進めるしかない」とみる。[br][br] 五輪選手への優先接種が進む欧米や中東などとは対照的に、ホスト国の日本では世論の反発を警戒し、優先接種の議論にすら入れていないのが実情。ワクチン政策の遅れが、大会の最大の足かせになりつつある。[br][br] ▽楽観一転[br] 観客を巡る議論も目算が狂った。3月20日に政府や組織委は、海外からの観客受け入れ断念を決定。25日には聖火リレーもスタートし、大会関係者は、国民の不安が和らぐとみて「これで中止論は消えるだろう」と今後を楽観視していた。[br][br] しかし、その後に感染状況が急速に悪化し、雰囲気は一転。大会関係者の間では、厳しい感染状況を踏まえると、本番で50%を超える観客を入れるのは困難で「収容人数の50%」のほか「無観客」もあり得るとの見方が強まる。ただ、組織委関係者は「たとえ『無観客でやる』と言っても、まだ五輪をやろうとしているのかと言われるだけ」とこぼした。[br][br] ▽世論注視[br] 医療体制が逼迫(ひっぱく)する中、医療従事者の確保も重い課題。組織委関係者は「特に看護師が集まらない」と明かす。組織委が日本看護協会に500人の看護師の確保を依頼したことが明るみに出ると強い批判にさらされた。[br][br] こうした状況でも、官邸幹部は「開催が大前提だとの菅義偉首相の決意は揺るがない」と強調する。一方、東京都の小池百合子知事は開催に向けた発言を意図的に控えているようにも映る。ある都幹部は「今『五輪』というワードを出せば、感染対策の呼び掛けを聞いてもらえなくなることは知事が一番分かっている。まずは感染を抑えることが重要で、しばらく積極的な発信は控えるだろう」と推察。「世論の動きを常に注視している」と読み解いた。 東京五輪・パラリンピックが直面する課題