【40年超原発再稼働】政府、脱炭素追い風に 他原発でも運転延長へ

 国内の原発と運転開始からの年数
 国内の原発と運転開始からの年数
東京電力福島第1原発事故後初となる、運転開始から40年を超えた原発の再稼働が近づいた。原発活用方針や新交付金を提示して地元同意を取り付けた政府は、脱炭素社会実現を追い風に他原発でも運転延長を進める方針だ。40年運転の原則は骨抜きが鮮明となり.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 東京電力福島第1原発事故後初となる、運転開始から40年を超えた原発の再稼働が近づいた。原発活用方針や新交付金を提示して地元同意を取り付けた政府は、脱炭素社会実現を追い風に他原発でも運転延長を進める方針だ。40年運転の原則は骨抜きが鮮明となり、「老朽原発」の再稼働拡大には懸念の声が上がる。[br][br] ▽生命線[br] 「総合的に勘案した結果、再稼働に同意することとする」。28日、記者会見に臨んだ福井県の杉本達治知事の一言で、再稼働への最後の関門だった地元同意手続きが完了した。経済産業省幹部は「他の原発活用への弾みになる」と、次の展開に期待を寄せる。[br][br] 背景にあるのは、菅義偉首相が昨年10月に打ち出した、2050年までに国内の温室効果ガス排出を実質ゼロにする温暖化対策だ。石炭火力発電の削減分を再生可能エネルギーの普及だけでは賄えないとして、産業界や与党内では発電時に二酸化炭素を出さない原発復権への期待が大きい。[br][br] しかし脱原発の世論は根強く、新増設は難しいのが現状だ。電力各社や経産省は、今ある原発の運転延長に軸足を置かざるを得ない。[br][br] 関西電力は美浜3号機、高浜1、2号機の安全対策工事に数千億円を投じ、後に引けない。幹部は「40年超の原発はわが社にとり生命線とも言える財産だ」と言い切る。[br][br] ▽最大限[br] 知事同意までは難航した。「こちらが求める文言を理解していない」。2月、杉本知事と梶山弘志経産相とのオンライン会談後、自民党県議はいら立ちを隠さなかった。[br][br] 地元は常々、国のエネルギー基本計画に「原発依存度を可能な限り低減」と盛り込まれていることに不満を募らせていた。国策に協力してきたのに、このままでは将来像を描けないとの危機感が強硬姿勢につながった。[br][br] 今月27日、再び知事と会談した梶山氏は「(原発を)最大限活用する」と踏み込む。原発1カ所につき最大25億円の新交付金が支払われる地域振興策と併せ、県側は「現時点で最大限の回答だ」と評価。関電が約束した使用済み核燃料の県外搬出は、候補地と期待する青森県むつ市の猛反発で実現のめどは立たないままだが、非難の声はかき消された。[br][br] ▽インチキ[br] 一方、老朽原発の“延命”には懸念も残る。22日の経産省の会合で、橘川武郎国際大教授は炉心溶融した福島第1原発1号機が運転40年目前だったと指摘。「原子力は基本的に危険な仕組みだ。堂々と新しいものを造ると言わない原子力政策はインチキだ」と訴えた。[br][br] 現在国内の原発は33基(建設中の3基を除く)。新増設がなければ30年代前半に半数以上が40年超となり、脱炭素社会実現の目標年である50年には、残っている20基全てが老朽原発となる。[br][br] 原発の運転期間を原則40年とするルールは、第1原発事故の反省を踏まえ定められた。1回に限り最大20年間延長できる。当初は「例外」との位置付けだったが、原子力規制委員会は「申請があれば審査は拒否できない」との立場だ。[br][br] 40年超原発では機器の劣化に加え「設計の古さ」も課題になる。規制委の更田豊志委員長は28日の記者会見で、第1原発1号機が他号機と冷却システムが違っていたことを例に挙げ「炉心溶融のような厳しい事故が起きた場合、古い炉は対処が難しくなる」と指摘。後続の40年超原発の審査も一筋縄ではいかないとの見方を示した。 国内の原発と運転開始からの年数