【紀州のドン・ファン不審死】直接証拠乏しく捜査難航 「消去法」で絞り込み

 資産家男性が殺害された事件の構図
 資産家男性が殺害された事件の構図
伝説上の色男「ドン・ファン」に例えられた資産家男性の不審死は、元妻の逮捕まで約3年を費やした。直接証拠に乏しく捜査は難航。和歌山県警は状況証拠を積み重ね、「消去法」で殺害が可能な人物を絞り込んだとみられる。だが供述が出なければ、起訴に踏み切.....
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 伝説上の色男「ドン・ファン」に例えられた資産家男性の不審死は、元妻の逮捕まで約3年を費やした。直接証拠に乏しく捜査は難航。和歌山県警は状況証拠を積み重ね、「消去法」で殺害が可能な人物を絞り込んだとみられる。だが供述が出なければ、起訴に踏み切ったとしても、有罪立証のハードルが高まる可能性がある。[br][br] 野崎幸助さん=当時(77)=が同県田辺市の自宅で倒れたのは、2018年5月24日の夜。約3カ月前に結婚した須藤早貴容疑者(25)が見つけたとされる。胃の内容物などから覚醒剤成分が検出され、同26日未明には県警が野崎さん宅を家宅捜索し、殺人容疑での立件を視野に捜査を開始した。[br][br] 周囲の関係者は取材に「野崎さんは健康に気を付けていた。自分から覚醒剤を使うことはない」と断言。捜査関係者によると、注射痕や目立った外傷は確認できなかった。自宅の防犯カメラの解析から、死亡推定時刻の午後9時前後に第三者が出入りした可能性は低く、自殺の動機は見当たらなかった。[br][br] ある警察幹部によると、県警は当初から須藤容疑者を重要参考人とみて捜査を展開した。しかし「有力な物証となり得る指紋やDNAなどが、家族である須藤容疑者の場合、室内で検出されるのが普通で証拠にならない」という状況だった。[br][br] 捜査は長期化。ワイドショーや週刊誌で取り上げられ「捜査はどうなっているのか」と警察への批判の声も上がった。水面下で捜査員は人の動きを精査するなどし、須藤容疑者以外が殺害に関与する機会はないと判断。「消去法の捜査」で逮捕にこぎ着けた。[br][br] 県警の逮捕発表によると、須藤容疑者は事件当日、夕飯の鍋料理を野崎さんと一緒に食べた。記者会見では覚醒剤をどうやって摂取させたのか質問が出たが、幹部は「今のところ、そのまま飲ませたか、何かに混ぜたかは分からない」と説明。殺害の手段には解明すべき点が残る。[br][br] 1998年に起きた和歌山市の毒物カレー事件も状況証拠しかなく、裁判は初公判から2009年に林真須美死刑囚の刑が確定するまで10年に及んだ。[br][br] 今回の事件を巡り、県警は容疑者が覚醒剤を自ら入手していたと説明。ルートの捜査で、状況証拠を補強するとみられる。野崎さんは遺産約13億円を田辺市に寄付するとの遺言書を残しており、事件の背景を探る手掛かりになりそうだ。 資産家男性が殺害された事件の構図