東京電力ホールディングスが空席となっている会長に、三菱ケミカルホールディングス会長で前経済同友会代表幹事の小林喜光氏(74)を招く方向で政府と最終調整していることが22日、分かった。東電は、柏崎刈羽原発(新潟県)が核物質防護の不備により事実上の運転禁止命令を受けるなど不祥事が続いており、小林氏に経営立て直しを託す。[br][br] 2011年の福島第1原発事故以降、東電は会長を外部から招き、経営改革や原発事故対応を進めてきたが、前任の川村隆氏(81)=元日立製作所会長兼社長=が昨年6月に退任してからは空席が続いていた。小林氏は取締役会議長も兼任する見通し。山積する課題に対処し、失墜した東電の信頼を回復できるかどうか経営手腕が問われる。[br][br] 小林氏は15~19年まで経済同友会の代表幹事を務め、政府の経済財政諮問会議の民間議員なども歴任。現在は東電の経営再建や福島第1原発の廃炉を支援する「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」の運営委員や、政府の規制改革推進会議の議長を務めている。[br][br] 東電は福島第1原発の廃炉と賠償にかかる費用のうち東電が負担する約16兆円について、柏崎刈羽原発の再稼働を軸に捻出することを柱とした経営再建計画の改定作業を進めるが、不祥事のため遅れている。 一方、政府は福島第1原発でたまり続ける放射性物質トリチウムを含んだ処理水を海洋放出する方針を13日に決定。地元の理解を得て海洋放出の計画を策定する必要があるが、漁業関係者らの反対が根強い。[br][br] 小林氏は東電会長として、一連の問題対応に取り組む。地球温暖化対策のため脱炭素への転換も迫られており「経営環境はさらに厳しくなった」(東電幹部)との声が出ている。