【日米韓巡る構図】訴訟門前払いで日韓確執に光明 日本側に楽観論なし

 日米韓3カ国を巡る構図(写真はロイター、聯合など)
 日米韓3カ国を巡る構図(写真はロイター、聯合など)
韓国のソウル中央地裁は21日、旧日本軍の元慰安婦らが日本政府に損害賠償を求めた訴えを門前払いした。賠償を命じた1月の判決とは正反対に「国益への懸念」や「外交優先」に踏み込んでおり、米国の意向を受け対日連携強化を目指す文在寅(ムンジェイン)政.....
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 韓国のソウル中央地裁は21日、旧日本軍の元慰安婦らが日本政府に損害賠償を求めた訴えを門前払いした。賠償を命じた1月の判決とは正反対に「国益への懸念」や「外交優先」に踏み込んでおり、米国の意向を受け対日連携強化を目指す文在寅(ムンジェイン)政権は安堵(あんど)した。確執が続く日韓関係に光明が差したが、日本側に楽観論は聞かれない。懸案解決への道は依然険しい。[br][br] ▽潮目[br] 「外国の主権行為に対して損害賠償を請求することは許されない」。裁判官の声が法廷に響いた。国家は他国の裁判権に服さないとされる国際法上の「主権免除」原則に沿った判断だ。却下されるべきだとの日本政府の立場とも合致した。[br][br] 原告を勝訴させれば、日本政府資産の差し押さえなど強制執行の過程で「外交関係の衝突」が予想されるとも指摘。慰安婦問題の解決は「外交交渉を含む韓国の努力により達成されなければならない」と促した。[br][br] 国際法上は妥当な判断だが、同じ地裁で1月、別の裁判官らが元慰安婦らを勝訴させていた。文在寅大統領は「正直少し困惑している」と発言。日韓関係への悪材料になるとの懸念を吐露した。[br][br] 対日強硬一辺倒だった文政権の下、元徴用工訴訟で日本企業への賠償や資産差し押さえを認めてきた韓国の裁判所。20日には1月判決の「国際法違反」を懸念し、日本政府資産の差し押さえを認めない決定が出ていたことが判明した。文政権が歩み寄りに転じたことを受け、司法判断の潮目も変わった可能性がある。[br][br] ▽死に体化[br] 文政権が関係改善にかじを切ったのはなぜか。韓国内で指摘されてきたのは(1)東京五輪で北朝鮮との関係改善につながる融和ムードを演出するため日本の協力が必要(2)日韓協力を求めるバイデン米政権の意向を酌むため(3)任期終盤の実績作りのため―の三つだ。東京五輪は北朝鮮が不参加を表明し、融和の舞台とはなり得ない公算が大きい。[br][br] 対米関係では、北朝鮮政策見直しを進めるバイデン政権に韓国が望む対話路線を取ってもらうため、米国が期待する日米韓、日韓協力に応じるのが得策との計算も働く。[br][br] 来年5月に大統領任期が迫る中、今月7日のソウル、釜山(プサン)両市長選での与党大敗でレームダック(死に体)化が進む政権。ソウル大政治外交学部の康元沢(カンウォンテク)教授は、内政で実績を残すのが難しく、外交に活路を見いだそうとするとの見方を示す。[br][br] ▽マイナス状態[br] 判決は追い風となるが、一筋縄には行きそうにない。日本政府は1月の判決や元徴用工訴訟を巡り、韓国側に「国際法違反」(茂木敏充外相)状態の解消を求める方針を堅持。政府筋は日韓関係を「ゼロどころかマイナスの状態」と指摘しており、一気に改善されるとの見方は皆無だ。[br][br] 韓国でも鄭義溶(チョンウィヨン)外相が21日の討論会で「国際法違反だとわれわれを罵倒しているが(問題をつくった)日本にそんな資格があるのか」と批判。東京電力福島第1原発処理水の海洋放出決定に対し、ソウルの日本大使館前では連日デモが相次ぐ。[br][br] 5月上旬のロンドンでの先進7カ国(G7)外相会合には鄭氏らも招待されており、茂木氏との同席が想定される。初会談の可能性について日本外務省幹部は「建設的な提案があれば別だが、急ぐ意味はない。時間もないから、立ち話があるかどうかだ」と語った。(ソウル、東京共同) 日米韓3カ国を巡る構図(写真はロイター、聯合など)