【東芝社長辞任】対立の果て「クーデター」 異常事態に発展

 東芝と買収提案を巡る構図
 東芝と買収提案を巡る構図
英投資ファンドによる買収提案の渦中にある東芝で、推進派の車谷暢昭社長が辞任に追い込まれた。提案をてこに続投を企てた車谷氏に、路線対立を深めていた他の経営陣が反撃。社会インフラ事業を数多く抱える名門企業で表面化した内紛は、事実上の「クーデター.....
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 英投資ファンドによる買収提案の渦中にある東芝で、推進派の車谷暢昭社長が辞任に追い込まれた。提案をてこに続投を企てた車谷氏に、路線対立を深めていた他の経営陣が反撃。社会インフラ事業を数多く抱える名門企業で表面化した内紛は、事実上の「クーデター」とも言える異常事態に発展した。[br][br] ▽暗闘[br] 「東芝再生のミッションが完了し、達成感を感じている」。14日の臨時取締役会後、車谷氏が発表したコメントは自発的な辞任を装うものだった。しかし実態は、7日にCVCキャピタル・パートナーズからの買収提案が明らかになってから1週間にわたり、経営陣が「暗闘」を繰り広げた末の逆転劇だった。[br][br] 「提案が来ているのは事実。取締役会で議論する」。7日朝に自宅前で記者に囲まれた車谷氏は買収提案の事実をあっさりと認めた。「既成事実化」を狙う車谷氏に強く反発したのが、企業統治強化へ社外から招かれた永山治取締役会議長だ。[br][br] 9日に議長名で異例のコメントを公表し、提案は「詳細な検討を経た上で行われていない」と突き放した。東芝経営陣の中核を占める2人の緊迫した応酬は、さながら「企業内幕もののテレビドラマのような展開」(大手銀行幹部)を見せた。[br][br] ▽不信任[br] 株主の支持率57%―。車谷氏は昨年の株主総会で、過半数の賛成票が必要な取締役再任をかろうじてクリア。しかし反対に回った「物言う株主」エフィッシモ・キャピタル・マネージメントは今年3月の臨時株主総会で株主提案を可決させた。今年の定時総会では車谷氏の再任案が否決され「不信任」を突きつけられるとの見方が強まった。[br][br] 自身が外部から連れてきた人材を重用する車谷氏の強引な経営手法に、東芝生え抜きの経営幹部には、しらけムードも広がっていたという。ライバルの電機大手の元幹部は「銀行出身の人にはやっぱりものづくりの現場は分からない」と指摘し、経営トップとしての求心力は低下していた。[br][br] こうした状況に、外資企業を親会社に持つ中外製薬を長年率いて企業統治の強化に取り組んできた永山氏は、車谷氏の手腕を疑問視するようになったとされる。東芝関係者によると、永山氏は買収提案の前にも車谷氏に退任を迫ったという。[br][br] ▽利益相反[br] そんな中で突然浮上したのが、車谷氏がかつて日本法人会長を務めたCVCによる買収提案だ。物言う株主の締め出しを可能にする株式の非公開化や、現経営陣の継続を前提とし、誰の目にも車谷氏に好都合な「利益相反にしか見えない」(取引銀行の中堅幹部)計画だった。[br][br] 永山氏は14日の記者会見で否定したが、13日夜には「車谷氏の解職動議を出す動きがあるとのうわさが東芝周辺で飛び交った」(関係者)。永山氏を中心に、臨時取締役会に向けた一部の取締役の周到な準備に外堀を埋められ、車谷氏は14日朝、自ら退任を申し出るしかなかった。[br][br] 車谷氏の退場によりCVCの買収提案は不透明となった。だが、別の米投資会社も東芝買収に関心を示しており、複数のファンドによる東芝の買収合戦に発展する可能性がある。CVCもこのまま引き下がるとは限らず、別のファンド関係者は「東芝を買った後に車谷氏を戻せばいい。そこまでやる人たちだ」と「第2幕」を予告した。 東芝と買収提案を巡る構図