【天鐘】(4月11日)

サラリーマンの給料が現金支給から銀行振り込みに変わるきっかけになったのは、53年前の「3億円事件」だといわれている。現金輸送車が狙われ、東芝社員のボーナスが盗まれた事件である▼筆者の初めての給料は現金だった。手にした茶封筒は薄かったが、1カ.....
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サラリーマンの給料が現金支給から銀行振り込みに変わるきっかけになったのは、53年前の「3億円事件」だといわれている。現金輸送車が狙われ、東芝社員のボーナスが盗まれた事件である▼筆者の初めての給料は現金だった。手にした茶封筒は薄かったが、1カ月働いたという感慨はあった。後に振り込みになり、袋の中身は明細書1枚に。さすがにその時は気が抜けたものだ▼時は流れて、政府は給与のデジタル払いを検討している。はやりのスマホ決済アプリ「○○ペイ」への直接入金である。手数料など企業のコスト削減が期待されている。一方で、振込口座を開いている銀行は戦々恐々だとも伝わる▼もっとも安全性については不安も上がる。業者が破綻したらどうなるのか、お金はちゃんと守られるのか。議論はこれから本格化しそうだが、実現すれば「給料日の感慨」はまた薄れそうだ▼夫の月給と、妻のへそくり。夫婦のお金を題材にドラマの台本を書いたのは、先日亡くなった橋田寿賀子さんだ。題名『袋を渡せば』は、脚本家としての橋田さんのデビュー作。世に出たのは3億円事件の4年前である▼例えば、帰宅して給料袋を妻に手渡す夫、機嫌のいい妻は夕飯のおかずを1品増やし…。昔の給料日は、ホームドラマの一場面に描かれるような、ささやかでも特別な日であった。デジタル時代の月給は黙って宙を飛んでいく。