【東京五輪代表入り】池江、復活劇に「努力必ず報われる」

 競泳の日本選手権女子100メートルバタフライで優勝した池江璃花子=4日、東京アクアティクスセンター
 競泳の日本選手権女子100メートルバタフライで優勝した池江璃花子=4日、東京アクアティクスセンター
信じられないような復活劇だった。4日に行われた競泳の日本選手権女子100メートルバタフライ決勝。レースを終えて順位と記録を確認すると、池江璃花子(20)=ルネサンス=は涙をあふれさせた。白血病により一度は諦めた東京五輪代表入りを決め、プール.....
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 信じられないような復活劇だった。4日に行われた競泳の日本選手権女子100メートルバタフライ決勝。レースを終えて順位と記録を確認すると、池江璃花子(20)=ルネサンス=は涙をあふれさせた。白血病により一度は諦めた東京五輪代表入りを決め、プールに入っている間も直後のインタビュー中も目は潤んだまま。「自分がすごくつらくてしんどくても、努力は必ず報われるんだと思った」。無観客で静まりかえった会場に震えた声が響き渡った。[br][br] 前半を首位とほとんど差がない2位で折り返し、長いリーチを生かした推進力でぐいぐいとゴールに迫って逆転した。指導する西崎勇コーチは池江の本質を「勝負師」と語る。柔らかな笑顔からは想像もできない競技者としての強い心(しん)が不屈のスイマーを支えている。[br][br] 昨年3月、病気判明後初めてプールに入った。水着契約するミズノは体調に配慮してウエットスーツのような保温水着を準備したが、本人は体が動かしやすい通常の練習用を着た。闘病でやせた体のラインが表れても気にするそぶりはない。ミズノの担当者は「スイマーとして戻ってきた」とうなった。まだ顔を水につけることを許されていない状態にもかかわらず、しっかりと泳いで記録を測り「このタイム、みんな覚えておいて」とうれしそうに言った。[br][br] 実戦復帰してからはアスリート魂にさらに火が付いたようだった。1年7カ月ぶりにレースに臨んだ昨年8月末の東京都特別大会は50メートル自由形で26秒32の5位。自らの日本記録に2秒11も遅れて悔しさを募らせた。9月に小学校時代に指導を受けた清水桂コーチと会食をし「前の自分を超えます」と宣言した。[br][br] 2019年12月の退院直後は食が細く、好物が並んでもなかなか食指が動かなかった。約1年後のこの冬は朝昼晩の3食に加えて補食も取った。食事管理を徹底して体重を増やし、徐々にたくましさを取り戻してきた。昨年は体調を考慮してほぼやらなかった1日2度の練習を今年に入って合宿では週1回のペースでこなせるようになった。[br][br] 日々の強化は24年パリ五輪でのメダル獲得を目指すためのものだったが、着実な積み重ねの成果が早くも出た。今大会の女子100メートルバタフライは予選、準決勝、決勝と泳ぐごとにタイムを伸ばした。「今はすごく幸せ」と言いつつ「世界と戦えるタイムではない。さらにこれから高みを目指していきたい」。悲劇のヒロインではない。競技者として、自らの真価を高らかに示した。 競泳の日本選手権女子100メートルバタフライで優勝した池江璃花子=4日、東京アクアティクスセンター