【まん延防止措置初適用】菅政権「想定外」激増に衝撃

 まん延防止等重点措置対象3府県と東京、全国の感染者数の推移
 まん延防止等重点措置対象3府県と東京、全国の感染者数の推移
新型コロナウイルスのまん延防止等重点措置の対象となった大阪府など3府県の感染者数激増は、菅政権にとって想定外だった。大阪府では緊急事態宣言下での抑え込みの甘さがリバウンド(感染再拡大)を招き、初の適用に追い込まれた形だ。ウイルスの猛威に衝撃.....
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 新型コロナウイルスのまん延防止等重点措置の対象となった大阪府など3府県の感染者数激増は、菅政権にとって想定外だった。大阪府では緊急事態宣言下での抑え込みの甘さがリバウンド(感染再拡大)を招き、初の適用に追い込まれた形だ。ウイルスの猛威に衝撃を隠せない菅義偉首相。第4波の足音が近づく中、政権が目指す収束はさらに遠のいたように映る。舞台裏を検証した。[br][br] ▽過去最速[br] 「さらに感染が拡大する。重点措置の適用を要請したい」。3月28日夜、大阪府の吉村洋文知事は西村康稔経済再生担当相の電話を鳴らした。府内の感染者数は3月下旬から急増。この日は323人でついに東京都を上回った。「過去最速のペース」(府幹部)に焦りを募らせていた。[br][br] 翌29日夕。重点措置適用に前向きな西村氏が「吉村氏が正式に求めてくるようです」と首相に報告したが、首相は聞き流した。府内の感染者数も213人にいったん減少。居合わせた官僚らの間では「首相は乗り気でない」との認識が広がった。[br][br] 緊急事態宣言の全面解除からまだ日が浅く、早々の重点措置の適用は「首相は解除の判断を誤った」との批判を浴びかねない。そうした懸念が脳裏を駆け巡ったのは想像に難くない。[br][br] ▽気脈[br] だが翌30日に状況は急変。大阪府の感染者数が29日の倍以上の432人に膨れ上がったからだ。[br][br] 「リバウンドが早すぎる」。首相はショックを受けた様子でこう漏らした。30日夜、重点措置を適用せざるを得ないと腹を固めた。飲食店の午後8時までの営業時間短縮を徹底するなど感染抑制の実効性を確保する―。それを吉村氏側がのむことが条件だった。[br][br] ここで機能したのが「首相―松井一郎大阪市長」のラインだった。首相は当初、重点措置の必要性を声高に訴える吉村氏を「快く思っていなかった」(関係者)。そこで首相と気脈を通じる松井氏が調整に乗り出し、首相と電話で協議した。対象区域の範囲を巡って政府と大阪府の間で意見の相違もあったが、決着を図った。[br][br] 大阪府の動きは、兵庫県など感染拡大が著しい他県にも影響を与えた。[br][br] 飲食業界への支援策「Go To イート」の2月下旬からの一時再開などを受け、感染者増を招いたとされる宮城県。村井嘉浩知事は予想を上回る感染状況の悪化に「身動きが取れなくなった」(知事周辺)結果、適用に傾いた。沖縄県は「独自の時短要請の効果を見極める」(官邸筋)として見送られた。山形県も隣接する宮城県での対策が功を奏せば、改善に向かうと判断された。[br][br] ▽無意味[br] 専門家の間では感染急増を許したこと自体への不満が渦巻く。ワクチン接種が広がるまで、何とか感染拡大を抑えるとの首相のシナリオも風前のともしびだ。日本医師会(日医)の中川俊男会長は3月31日の記者会見で「これまで第1、第2、第3波が襲来したが、本格的に押し返したことは一度もなかったのではないか」と強調。緊急事態宣言下での対策の不十分さを問題視した。[br][br] 「宣言慣れ」「自粛疲れ」が指摘されるだけに、重点措置が効果を発揮するかどうかは見通せない。政府の専門家会議メンバーで日医の釜萢敏氏はくぎを刺した。「住民に『大変な事態だ』と思ってもらえるか。『また出した』と捉えられたら何の意味もない」 まん延防止等重点措置対象3府県と東京、全国の感染者数の推移