時評(3月24日)

日銀が金融緩和の効果を点検し、政策の修正を決めた。主要な政策手段である長期金利の変動幅を拡大、上場投資信託(ETF)購入の弾力化、金融機関への貸出促進付利制度の新設が柱だ。 新型コロナウイルスの感染による日本経済への打撃が長期化する懸念があ.....
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 日銀が金融緩和の効果を点検し、政策の修正を決めた。主要な政策手段である長期金利の変動幅を拡大、上場投資信託(ETF)購入の弾力化、金融機関への貸出促進付利制度の新設が柱だ。[br] 新型コロナウイルスの感染による日本経済への打撃が長期化する懸念がある。経済回復につなげる金融緩和の継続は欠かせないが、8年に及んでいる大規模な金融緩和にもかかわらず、政策目標の「2%の物価上昇目標」は達成できていない。[br] さらに金融緩和を長引かせたことで「副作用」が生じ、市場機能の低下や金融機関の収益圧迫という状況を招き、政策効果を阻害する要因となっている。[br] 政策修正について、黒田東彦総裁は「政策の持続性、機動性を高め、強力な金融緩和を粘り強く続ける」ためであることを強調。「マイナス金利の深掘り」を含めた追加緩和の余地に言及したが、政策選択の幅はなお狭いことに変わりはない。[br] 安倍晋三前首相と黒田総裁がタッグを組んで推進したアベノミクスは株価上昇と円安が主導した。その過程で日銀によるETF購入が株価下支えの大きな役割を果たした。[br] だが、実質的な「官製相場」の形成により、本来、市場で決まるべき価格を人為的に操作することになり、将来の価格変動リスクを高めることにつながりかねない。[br] 今後は東証株価指数(TOPIX)連動型の銘柄のみを購入し、日経平均株価への連動を回避する措置へ修正。0%程度に誘導している長期金利の変動幅を上下0・25%程度へと拡大、経済情勢などに応じて金利が上下する市場機能を回復させる。[br] 新設する「貸出促進付利制度」は、新型コロナに対応した融資を実施した金融機関に対し、政策金利に連動した実質的な補助金を出す仕組みで、経営環境が悪化する金融機関に配慮した。[br] 緩和政策の「負の効果」を取り除くことで、金融機関の貸し出しを促して経済活動を促す「正常な緩和効果」を作り出すことが日銀の狙いだ。しかし、コロナ禍にあって日本経済の潜在成長率は0%前後の水準に低下してきており、緩和資金が企業活動など実体経済を押し上げる形につながってはいない。むしろ株式や債券など「資産市場」に向かって、格差拡大の要因になっているとの指摘もある。[br] コロナ禍を乗り越えて日本経済の姿をどう描くのか。金融緩和の限界も見据え、効果的に政策を講じていく難しいかじ取りが、日銀には求められている。