【コロナ県内初確認1年】日々緊張の最前線、医療現場の今

八戸市立市民病院では感染制御チームが中心となり、検査体制の構築や感染対策の訓練などに取り組んでいる(写真はコラージュ) 
八戸市立市民病院では感染制御チームが中心となり、検査体制の構築や感染対策の訓練などに取り組んでいる(写真はコラージュ) 
新型コロナウイルスの検査や治療を担う医療の現場では、医師や看護師ら医療従事者が最前線で未知のウイルスと闘ってきた。「絶対に自分が感染するわけにはいかない」。医療従事者は日々、張り詰めた緊張感の中、治療や感染対策、検査体制の確立などに取り組ん.....
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 新型コロナウイルスの検査や治療を担う医療の現場では、医師や看護師ら医療従事者が最前線で未知のウイルスと闘ってきた。「絶対に自分が感染するわけにはいかない」。医療従事者は日々、張り詰めた緊張感の中、治療や感染対策、検査体制の確立などに取り組んできた。中でも患者を受け入れてきた八戸市立市民病院では感染制御チーム(ICT)が、感染抑止の要となり、今も現場で命を守り続けている。[br][br] ICTは同病院の医師や看護師、臨床検査技師、薬剤師ら10人で構成する感染対策のプロフェッショナル集団。現場で治療に当たるほか、感染対策計画を立て、確実に実践されているかを確認するなどして、院内での感染を防ぐのが役割だ。[br][br] 同病院では、新型コロナが国内で拡大する前からICTが中心となり訓練に取り組んできた。初めて感染者を受け入れたのは昨年3月23日。訓練を重ねたとはいえ、防護服などの消耗が予想以上に早く、全国的に感染対策関連の物資が不足する中、限られた備品を効率的に使えるような体制づくりを急いだ。[br][br] 感染者への対応も困難を極めた。防護服を着ると音が聞こえづらく、顔を覆うシールドも曇る。患者にじかに触れることができないため、微妙な変化が感じ取りにくい。ICTの大澤純子看護師と鳥喰綾乃看護師は「通常よりも何十倍も大変だ」と現場の苦悩を語った。[br][br] 特に対応が難しいのが認知症の高齢者だ。食事や排せつなどの介助が必要となるため、看護師の感染リスクは必然的に高まる。大澤看護師は「患者さんとどこまで関わるか常に葛藤している。看護の質が落ちないように通常の患者さん以上に気を配らなければならない」と強調する。[br][br] 検査体制の確立にもICTが大きく関わった。臨床検査技師の堀内弘子技師と金澤雄大技師によると、PCRのような遺伝子検査は特殊な技術が必要で、対応できる技師は限られる。[br][br] 当初は青森市の青森県環境保健センターに検体を送っていたが、日々増え続ける検査に迅速に対応するため、昨年4月には検体採取から検出まで全て院内で完結できる体制を構築。検査技士の育成を急ぐとともに、検査時間を大幅に短縮できる「TRC法」と「LAMP法」を導入した。24時間体制で検査をした時期もあり、これまでに約1700件の検査を実施したという。[br][br] 医療従事者らの緊張は私生活にも及ぶ。休憩中は壁側を向いて食事をし、休日の行動範囲も最小限にとどめるなど細心の注意を払う。中には家庭内での感染を防ぐため、アパートを借りて家族と離れて生活している職員もいるという。[br][br] いまだ収束の見通しが立たない中、地域医療を守るためには医療従事者だけでなく、地域住民の協力も不可欠。手洗いやマスクはもちろん、スーパーでの買い物前後の手指消毒など市民一人一人が対策に取り組むことが医療現場の支援につながる。[br][br] 大澤看護師は「抑え込める感染は抑え込まなければ本来救えるはずの命も救えなくなる」と医療の逼迫(ひっぱく)を懸念。「感染対策は継続が大切。どうしたら意識を高く持ち続けられるかを考えることが今後の課題」と指摘する。八戸市立市民病院では感染制御チームが中心となり、検査体制の構築や感染対策の訓練などに取り組んでいる(写真はコラージュ)