【東京五輪・パラ】海外観客受け入れ断念 国民の懸念、払拭狙う

 東京五輪の観客受け入れを巡る動き
 東京五輪の観客受け入れを巡る動き
東京五輪・パラリンピックは海外からの一般観客なしという、極めて異例の形で開催されることになった。新型コロナウイルス感染症の収束のめどが立たない中で厳しい判断を強いられた。25日の聖火リレー開始を前に国民の懸念を払拭(ふっしょく)する狙いだが.....
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 東京五輪・パラリンピックは海外からの一般観客なしという、極めて異例の形で開催されることになった。新型コロナウイルス感染症の収束のめどが立たない中で厳しい判断を強いられた。25日の聖火リレー開始を前に国民の懸念を払拭(ふっしょく)する狙いだが、大会に懐疑的な国内世論を好転させることができるかどうかは見通せない。大会に伴う経済効果は低減し、政権の戦略にも痛手となるのは必至だ。[br][br] ▽整理[br] 「国内の医療に支障を来さないため、国民や選手、関係者の安全安心を確保するために致し方ない結論だった」。大会組織委員会の橋本聖子会長は20日夜の記者会見で、苦渋の表情を浮かべた。[br][br] 聖火リレーのスタート前に海外観客の受け入れを断念する筋書きは、1月下旬から組織委の一部幹部の間で練られていた。新型コロナの変異株出現と国内の新規感染者数の増加で、外国人の入国に世論が最も過敏になっている時期。「こんな時に五輪の客だけ入れろと言おうものなら、五輪全体が袋だたきにあう」(組織委幹部)との危機感が背景にあった。[br][br] だが、海外観客見送りはインバウンド(訪日外国人客)による経済再生を狙う政権の戦略に影響し、長く観光振興の旗を振ってきた菅義偉首相のメンツにも関わる。日本政府が入国制限措置を理由に見送ったのではなく、あくまで選手の安全のため国際オリンピック委員会(IOC)との合議で決定したと「整理」(政府筋)するためにも、日本側は国内の枠組みではなく5者協議での決着にこだわった。[br][br] IOC側は当初「外から入ってくる人は誰であれ脅威だというメッセージになる」などと早急な議論に難色を示したが、最終的に聖火リレー前の判断に同意。大会関係者は「ここまで水際対策を厳しくしたのだから、聖火リレーも大会本番も大丈夫という空気をつくる必要があった」と明かす。[br][br] ▽日本公演[br] 海外観客見送りの影響は大きい。関西大の宮本勝浩名誉教授は、五輪・パラの観戦者を日本在住者に限定し、入場者を収容人数の半分に制限した場合、経済的損失は約1兆6258億円になると試算。五輪の海外観光客が日本を再訪する機会も失われると指摘する。[br][br] 政権幹部は「会場など施設整備を通じた経済効果はあった」と強調するが、政府関係者は「ホテルなど観光関連産業への影響は無視できない」と話す。[br][br] 組織委が900億円と見込むチケット収入が減少するのも不可避。組織委関係者はチケットの払い戻しや宿泊施設のキャンセルなどを巡る訴訟リスクを懸念する。[br][br] 外国人観客やボランティア、住民が草の根レベルで国際交流を持つ機会は大幅に減り、国際総合大会の価値の重要な部分が失われる。政府内からは「イベントの『日本公演』のようになってしまうが、中止よりはまし」との声が漏れる。[br][br] 海外の一般観客の受け入れは見送られるものの、IOC側が重視しているとされるスポンサー枠の招待客の扱いは今後の焦点になる。大会本番では数万人規模の選手や関係者が来日する予定。日本側が防疫措置と大会運営のバランスに苦慮する場面が続く。 東京五輪の観客受け入れを巡る動き