【連載・漂うコメ】(5・完)飼料用米

八戸臨港倉庫の3号ふ頭倉庫で運搬車に積み込まれる飼料用米=2月中旬、八戸港
八戸臨港倉庫の3号ふ頭倉庫で運搬車に積み込まれる飼料用米=2月中旬、八戸港
巨大なサイロが立ち並ぶ八戸港の八戸飼料穀物コンビナート。東北地方では最大、全国でも3位の規模を誇り、配合飼料の一大供給基地として約40年、青森、岩手両県の主要産業である畜産を支えてきた。 八戸臨港倉庫(大矢卓社長)は、港湾やコンビナートに近.....
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 巨大なサイロが立ち並ぶ八戸港の八戸飼料穀物コンビナート。東北地方では最大、全国でも3位の規模を誇り、配合飼料の一大供給基地として約40年、青森、岩手両県の主要産業である畜産を支えてきた。[br][br] 八戸臨港倉庫(大矢卓社長)は、港湾やコンビナートに近接した立地を生かし、各メーカーが配合飼料の原料として使う飼料用米を保管、供給している。佐々木仁文常務は「飼料用米の取扱量は年々増えており、今後も伸びるだろう」との見通しを示した。[br][br] 飼料用米は、国が主食用米から転換を促す作物の筆頭だ。昨年3月に閣議決定した「食料・農業・農村基本計画」では生産拡大の方針が明確に位置付けられ、2030年度の生産努力目標は70万トンと、18年産実績の1・6倍に設定された。[br][br] 国が作付けを推進する背景には、水田機能を維持しつつ自給率の向上を図る狙いがある。配合飼料の原料となるトウモロコシや大豆は、ほとんどを輸入に頼っているのが現状で、相場の高騰により度々、飼料価格が跳ね上がっている。[br][br] 今年に入ってからも、配合飼料の価格は1トン当たり4千~5千円値上がりした。南米や米国の天候不順、中国の旺盛な需要などが原因で、三八地域のある畜産農家は「餌を減らすわけにはいかず、じわじわと経営を圧迫している」と嘆く。[br][br] 飼料用米はトウモロコシの代替となり、潜在的需要は高い。農林水産省が各飼料業界団体に聞き取り調査を行った結果、使用可能数量は鶏や豚向けを中心に、年間約130トン(20年12月現在)に上った。[br][br] 畜産経営安定の観点から期待する向きもあるが、生産量は主食用米の価格で上下し、輸入原料以下の価格で供給するにはコスト面で課題もある。現状で主要な原料とは言えず、ある飼料メーカー幹部は「率直に言えば主食用米の調整弁。畜産側は『使ってあげている』との認識だ」と明かす。[br][br] とはいえ、主食用米の需要減は待ったなしの状況で、飼料用米の生産と利用の拡大はコメ政策の重要なテーマだ。一般社団法人「日本飼料用米振興協会」(東京)は昨夏、「今が勝負どころ。『転作』ではなく『本作』として増産し、定着させていくことが本筋だ」との声明を出し、長期視点に立った一貫性のある政策の必要性を訴えた。[br][br] 同協会理事で、東京農業大農学部元教授の信岡誠治氏は、畜産農家が飼料用米の提供を受ける代わりに、稲作農家に安価な肥料を提供する「耕畜連携」を提唱。コンビナートが立地する北奥羽地域には地の利があるとして、「関係機関や飼料メーカーの支援が必要。積極的に産地指導などに乗り出してほしい」と期待を込めた。八戸臨港倉庫の3号ふ頭倉庫で運搬車に積み込まれる飼料用米=2月中旬、八戸港